喪失の夜に、あなたがいた

ホテルの最上階にある宴会場は、まるで別世界のようだった。

天井まで届くシャンデリア。
 磨かれた床に反射する光。
 静かに流れるクラシック。

明莉は一歩踏み入れた瞬間、
 胸の奥がきゅっと縮まるのを感じた。

(……楓さんは、こんな場所で生きてきたんだ)

自分とは違う世界。
 その差が、ほんの少しだけ痛かった。

「大丈夫ですか」

楓がそっと声をかける。
 その声は、いつもより少しだけ柔らかかった。

「……はい」

明莉は微笑もうとしたが、
 胸の奥の緊張はほどけなかった。

会場の中央がざわめいた。

人々が左右に分かれ、
 ゆっくりと一人の女性が歩いてくる。