喪失の夜に、あなたがいた

その夜。
明莉はベッドに横になりながら、天井を見つめていた。

楓の会社の20周年パーティー。
楓の世界。
楓の出自。

今まで聞いたことがなかった。
楓は多くを語らない人だった。
だからこそ、その世界に足を踏み入れることが少し怖かった。

(……でも、楓さんが一緒なら)

そう思おうとした瞬間、
胸の奥に小さな影が落ちた。

理由はわからない。
ただ、なんだかわからないけど、怖く感じた。

リビングでは、楓がひとり静かに名刺ケースを開いていた。

数日前、
昔の知り合いから送られてきた情報の中に
“白石玲奈”という名前があった。

ただの取引先の令嬢。
そう思っていた。

まさか、
明莉を追い詰めている影の正体だとは
楓はまだ知らない。

影はまだ形を持たない。
ただ、静かに近づいていた。