喪失の夜に、あなたがいた

数日前の午後。
撮影所の控室で、明莉はゆっくりと深呼吸をした。

胸の奥が重い。
息を吸うたびに、どこか痛む。

(……また、SNS)

通知を切っていても、噂は耳に入ってくる。

《泣いてるらしい》
《復帰早すぎ》
《向いてない》

誰が言っているのかもわからない。
ただ、影のようにまとわりついて離れなかった。

その日も撮影はなんとか終わったが、
帰り道の足取りはいつもより重かった。

玄関を開けると、
リビングの灯りが柔らかく揺れた。

楓が、静かに顔を上げる。

「おかえりなさい」