喪失の夜に、あなたがいた

翌朝。
 明莉が出かけたあと、楓は静かな部屋の中でしばらく立ち尽くしていた。

昨日の明莉の表情が、
 どうしても頭から離れなかった。

目の下の影。
 震える声。
 “見られている気がする”という言葉。

(……何が起きている)

考えても答えは出ない。
 ただ、胸の奥に重たい塊が沈んでいく。

午前中、楓は事務所に連絡を入れた。
 加苅につないでもらった。加苅は対応に追われていた。

「楓くん、申し訳ないがSNSの件、こちらで調査はしているのだが、
 なかなか、対応が追い付いていかない状態なんだ。開示請求をしているが、
 ただ、量が多くて……」

「明莉さんの精神状態が心配です。
  現場で何か起きていませんか」

楓はできるだけ冷静に言った。
 声のトーンを落とし、
 感情を表に出さないように。

加苅に変わり担当者が答える。

「……現場からの報告はありません。
  ただ、SNSの影響は大きいので……
  本人が耐えるしかない部分もあります。社長と相談して、弁護士に相談しています」

その言葉が、
 楓の胸に静かに刺さった。