喪失の夜に、あなたがいた

(……また)

(……まだ続いてるんだ)

誰が書いているのかもわからない。
どうしてこんなことになるのかもわからない。

ただ、
“自分が悪い”ような気がしてしまう。

午後の撮影。
集中しようとしても、
台詞が頭に入ってこない。

監督が少しだけ眉をひそめた。

「佐伯さん、もう一回いこうか。
 集中できないんだったら少し休憩入れるけど……。
 こっちも遊びでやってるわけじゃないから、
 やる気がないんだったら……きついこと言うようだけど、
 君以外にもいるから」

その声は優しい。
怒っていない。
責めてもいない。

でも──
その優しさが、
自分の弱さを照らしてしまう。

(……ちゃんとしないと)

(……迷惑かけちゃだめ)

そう思うほど、
呼吸が浅くなる。

胸が苦しい。

台詞が震える。

「佐伯さん……今日は、もうやめよう」

監督の言葉に、
明莉は首を横に振った。

「大丈夫です。できます……」

でも、声が掠れていた。

撮影が終わる頃には、
足が少し震えていた。

帰り支度をしていると、
加苅が駆け寄ってきた。

「明莉。……SNSの件、悪いな。
 こんな状態に追い込んで……。
 もう少し待ってくれ……」

その言葉で、
胸の奥がストンと落ちた。

(……止められない)

(……じゃあ、私はどうすれば)

喉の奥が熱くなった。

涙は出ない。
でも、泣きそうだった。

「……すみません。
 ご迷惑ばかりで……」

そう言った瞬間、
加苅が慌てて首を振った。

「違う! 明莉は悪くない。
 ただ……量が多すぎて……対応できてないんだ。
 今、動いてるからな」

量。
多すぎる。

その言葉が、
胸に重く沈んだ。

(……誰が)

(……どうして)

(……私は、何をしたの)

答えはどこにもない。

ただ、
圧だけが増えていく。

静かに、
確実に。