喪失の夜に、あなたがいた

撮影が続くにつれ、
胸の奥に重たい膜が張りつくような感覚が増えていった。

疲れている──
そう思いたくなかった。

復帰したばかり。
迷惑をかけたくない。
ちゃんと立ちたい。

でも、身体は正直だった。

朝、鏡を見ると、
目の下の影が濃くなっている。

「……大丈夫、大丈夫」

小さく呟いて、ファンデーションで隠した。

現場に入ると、
スタッフの空気がどこか張りつめていた。

誰も何も言わない。
でも、視線が少しだけ冷たい。

(……また何か書かれてるのかな)

スマホは見ないようにしている。
見たら崩れそうだから。

でも、
見なくても“わかる”。

空気が、自分の周りだけ少し重い。
何も言われないことが一番きつい。
それが、痛かった。

昼休憩。
メイクさんが、そっと明莉の顔を覗き込んだ。

「明莉ちゃん……ちょっと疲れてる?」

「え……そんなことないです」

笑おうとしたけれど、
頬がうまく上がらなかった。

メイクさんは優しい人だ。
だからこそ、その優しさが胸に刺さる。

「SNS、見ないほうがいいよ。私は信じてないの。
 明莉ちゃんの人柄、知ってるから。
 ……いろいろ書かれてるみたいだから」

その言葉で、
心臓がぎゅっと縮んだ。