喪失の夜に、あなたがいた

玲奈のリーク騒動が起きてから、
楓はほとんど眠れていなかった。

事務所の会議室で対策を練りながらも、
心の奥ではずっと同じ問いが渦を巻いていた。

(……俺は、ちゃんと守れているのか)

明莉のSNSは荒れ続け、
週刊誌は裏で動き、
影は濃くなるばかりだった。

契約結婚という形でそばにいるのに、
守ると決めたのに──
それでも明莉は傷ついている。

その事実が、
楓の胸を静かに締めつけた。

マンションに戻ると、
明莉はソファに座っていた。

スマホを伏せたまま、
静かに呼吸を整えている。

その横顔を見た瞬間、
楓の胸にまた痛みが走った。

(……強い人だ)

佑輔が言っていた通りだった。
明莉は、壊れやすいのに強い。
強いのに、どこか危うい。

その矛盾が、
楓の心をいつも揺らした。

「……大丈夫ですか」

声をかけると、
明莉はゆっくり顔を上げた。

「うん。大丈夫です。
 ……戻るって決めましたから」

その言葉は、
震えているのに、まっすぐだった。

楓は胸の奥が熱くなるのを感じた。