喪失の夜に、あなたがいた

佑輔が亡くなった日のことを、
楓は今でも鮮明に思い出す。

あの日、世界の色が一瞬で消えた。
胸の奥にあった“当たり前”が、
音もなく崩れ落ちていった。

佑輔は、楓にとって初めての“親友”だった。
重森家の肩書きも、家柄も、期待も──
何も気にせずに接してくれた唯一の存在。

「楓、名前で呼んでいいか?」
「お前はお前だろ。重森とか関係ないって」

その言葉がどれほど救いだったか。
楓は誰にも言わなかったが、
佑輔は楓の人生を変えた人だった。

だから──
その佑輔が突然いなくなったとき、
楓の心は深い穴に落ちた。

(……守れなかった)

その思いが、
ずっと胸の奥に沈んでいた。

葬儀の日。
明莉は参列できなかった。

佑輔の姉から、
ショックで佑輔の子供を流産したと聞いた。

その言葉を聞いた瞬間、
楓の胸に鋭い痛みが走った。

(……あの子は、どれだけ傷ついたんだ)

(佑輔の代わりに……俺が守らなきゃ)

明莉が退院すると聞いたとき、
楓はどうしても放っておけなかった。