喪失の夜に、あなたがいた

それが、
楓の“本心”の始まりだった。

誰にも言えない。
言ってはいけない。
言葉にしてしまえば、
何かが壊れてしまう。

だから楓は、
その感情を静かに封じた。

佑輔が亡くなったとき──
楓は自分の胸の奥にあるその感情を
さらに深く沈めた。

(……俺が守らなきゃいけない)

それは佑輔の遺言だからではない。
重森家の責務だからでもない。

もっと深い場所から湧き上がる、
自分自身の想いだった。

けれどその想いは、
まだ言葉にならない。
まだ認められない。

ただ静かに、
胸の奥で息をしている。

そして今──
明莉が再び傷つこうとしている。

影が濃くなるほど、
楓の胸の奥にある“本心”は
輪郭を強めていった。

(……守りたい)

その想いは、
もう誰のものでもない。
楓自身のものだった。