喪失の夜に、あなたがいた

どれくらい眠っていたのか、明莉にはわからなかった。
まぶたの裏がゆっくりと明るくなり、世界が少しずつ形を取り戻していく。

目を開けると、見慣れない天井があった。
柔らかな光が差し込み、静かな空気が部屋を満たしている。
雨の匂いはもう消えていて、代わりに洗い立ての布の匂いがした。

(……ここ、どこ……?)

身体を起こそうとすると、胸の奥がずきりと痛んだ。
昨日のことが、ゆっくりと、残酷なほど鮮明に蘇る。

(私、どうしてここに……眠ったまま佑輔のもとに逝きたかった)

佑輔の笑顔。
最後の言葉。
落ちていった手。
病室の白い光。
自分の足元に広がった赤い色。
雨の中を歩いた冷たさ。
楓の腕の温度。

全部が一度に押し寄せてきて、呼吸が浅くなる。

ソファの近くに置かれた毛布が肩から滑り落ちた。
それを拾い上げながら、明莉は自分の手が震えていることに気づいた。

(……私、こんなに……)

壊れている。
その事実が、胸の奥に静かに沈んでいく。