喪失の夜に、あなたがいた

むしろ、
影はより濃く、より静かに広がっていった。

その頃、明莉はマンションで
SNSのざわつきを見つめていた。

記事は出ていない。
けれど、
悪意の言葉は増え続けていた。

「なんでこんなに……」

胸の奥が揺れる。
不安が波のように押し寄せる。

けれど──
折れなかった。

(……私は戻るって決めたんだ)

その決意だけが、
揺れる心をそっと支えていた。

事務所の会議室では、
加苅が静かに言った。

「……影が動いている。誰かが明莉を狙っている。
 だが、絶対に守る」

楓はゆっくりと頷いた。

「僕も……守ります。
 あの人が、もう傷つかないように」

その言葉は、
静かで、しかし強かった。

影が最大濃度に達した瞬間──
楓の心の奥にある“本心”が、
静かに形を持ち始めていた。

この影は、
彼の想いを浮かび上がらせるための
最後の試練だった。