喪失の夜に、あなたがいた

記者の不自然な質問。
視線の奥に潜んでいた“影”。
そして今、SNSでの急激な炎上。

偶然とは思えなかった。

マンションのエントランスに入ると、
静けさがふわりと包み込んだ。
外のざわつきが嘘のように消えていく。

エレベーターの鏡に映る自分は、
少しだけ疲れて見えた。

(……大丈夫。
 私は戻るって決めたんだ)

そう言い聞かせるように、
胸の奥に灯った光をそっと抱きしめる。

けれどその光は、
外の世界に漂う“影”の気配に
静かに揺らされ続けていた。

マンションの扉を開けた瞬間、
温かい空気が迎えてくれた。

その空気に触れた途端、
明莉はようやく息を吐いた。

(……帰ってきた)

そう思えた瞬間、
胸の奥の緊張が少しだけほどけた。

しかし、
影は確かに動いている。

その気配だけが、
明莉の心の奥に静かに残っていた。