喪失の夜に、あなたがいた

マンションへ向かう帰り道、
夕方の風が頬を撫でた。
スタジオの熱がまだ肌に残っているようで、
胸の奥には、かすかな達成感が灯っていた。

(……ちゃんと話せた。
 ちゃんと前を向けた)

そう思うと、
少しだけ肩の力が抜けた。

けれど──
その安堵は、スマホの通知音で一瞬にして揺らいだ。

画面を開くと、
SNSのタイムラインがざわついていた。

「復帰?需要ないでしょ。何でいまさら。もうあんたの時代は終わったってのに、ちゃんちゃらおかしいわ」
「カフェで働いてたくせに」
「何を今さら」

冷たい言葉が、
まるで氷の粒のように胸に落ちてくる。

もちろん、温かい言葉もあった。

「おかえり!」
「ずっと、待ってた!早く新しい作品みたいよ」
「また見られるの嬉しい!」

その声が救いになる。
けれど、
影のように混ざる悪意が、
その光を静かに曇らせた。

(……どうして、こんなに急に)

インタビューが公開されたばかりなのに、
まるで誰かが合図を送ったかのように、
悪意の言葉が一斉に広がっていく。

胸の奥がざわりと揺れた。

(……なんで)

スタジオで感じた違和感が、
再び形を持って浮かび上がる。