喪失の夜に、あなたがいた

その日の夜。
事務所から復帰コメントが発表された。

SNSはすぐに反応した。

「おかえり!」
「待ってた!」
「また見られるの嬉しい!」

そんな温かい言葉が並ぶ一方で、

「カフェで働いてたくせに」
「落ちぶれた女優が何を今さら」
「復帰しても需要ないでしょ」

そんな冷たい言葉も混ざっていた。

光と影が同時に押し寄せる。
それが“表の世界”だった。

スマホを見つめる明莉の手が少し震えた。
けれど、心は折れなかった。

(……私は、戻るって決めた。
 まだ弱々しいけど、自分の足で歩を進める。
 佑輔のためにも……)

その決意が胸の奥で静かに灯っていた。

楓は明莉の隣で、
画面を見ずにただ言った。

「どんな言葉があっても、
 あなたの価値は変わりません」

その声は、
SNSの喧騒よりもずっと強く、
ずっと深く響いた。

明莉はそっとスマホを閉じた。

「……ありがとうございます」

「礼はいりません。
 あなたが前を向けるなら、それで十分です」

その言葉に、
胸の奥が静かに温かくなった。

(……大丈夫。
 私はもう、逃げない)

その思いが、
確かに、明莉の中で形になっていた。