喪失の夜に、あなたがいた

その言葉に、胸がじんとした。

「重森さんから話は聞いている。
 お父様とは古い友人だからね。
 彼から“明莉のことを任せてほしい”と言われて、
 二人の関係性はわからないようにすると約束して、任せることにした」

加苅は資料を広げながら言った。

「まずは、無理のない範囲で活動を再開しよう。
 バラエティやイベントはまだ避ける。
 最初は雑誌のインタビューからだ」

明莉は小さく頷いた。

「……お願いします」

「ただし――」

加苅は少しだけ表情を曇らせた。

「最近、君の写真がSNSに出回っている。
 楓くんから“悪意のある投稿が出回っていて、君が傷ついている”と聞いている。
 もちろん、カフェはやめてもらう」

明莉は息を呑んだ。

「……すみません」

「謝る必要はない。
 でも、復帰する以上、
 “明莉は元気に戻ってきた”という印象を作る必要がある」

その言葉は厳しいようで、
でも現実を教えてくれる優しさでもあった。

「復帰コメントを出そう。
 内容は僕が用意するけど……
 最後の一文だけ、君の言葉で締めてほしい」

「私の……言葉で?」

「そうだ。
 君が“戻りたい”と思った理由を、短くでいい。
 それがファンに届く」

明莉は胸に手を当てた。

(……戻りたいと思った理由)

それはひとつしかなかった。

「……もう一度、自分の人生を生きたいからです」

加苅は静かに微笑んだ。

「いい言葉だ。
 それでいこう」