喪失の夜に、あなたがいた

昼休憩。
スタッフルームでひとりになった途端、
明莉は深く息を吐いた。

(……限界かもしれない)

昨日のSNSの言葉が頭に浮かぶ。

「落ちぶれた元女優がバイトしてる」
「男に捨てられて働くしかないらしい」
「ダサすぎる」

その言葉が、
胸の奥に重く沈んでいく。

(……このままじゃ、終われない)

その思いが、
ふいに胸の奥で強く響いた。

逃げてばかりの自分が嫌だった。
誰かの言葉に怯えて、
自分の人生を閉じてしまうのが怖かった。

(……私は、あの世界から逃げたんじゃない。
 ただ、立ち止まっていただけ)

その気づきが、
静かに、しかし確かに明莉の胸に灯った。

そしてその瞬間、
心の奥で“決意の芽”が小さく動いた。

まだ弱くて、
触れれば折れてしまいそうなほど小さな芽だったけれど──

確かに、そこにあった。