喪失の夜に、あなたがいた

退院してから数週間。
 明莉はゆっくりと体力を戻し、少しずつ“日常”へ帰る準備をしていた。

そして──
 ついにドラマの撮影現場へ戻る日が来た。

スタジオの扉を開けた瞬間、
 明莉は胸の奥がじんわりと熱くなるのを感じた。

照明の光。
 スタッフの声。
 台本の紙の匂い。

すべてが懐かしく、
 すべてが温かかった。

「明莉ちゃん、おかえり!」

「待ってたよ!」

「無理しないでね。でも……本当に戻ってきてくれて嬉しい」

スタッフたちが次々と声をかけてくれる。

その言葉のひとつひとつが、
 胸の奥に静かに染み込んでいった。

「色々、頑張ったね。明莉ちゃん」

(……帰ってきたんだ、私)

明莉は小さく微笑んだ。