喪失の夜に、あなたがいた

薄い灰色の壁。
 冷たい蛍光灯の光。
 机の上に置かれた録音機。

取り調べ室は、 どこまでも無機質で、
 どこまでも静かだった。

その静けさの中で──
 玲奈だけが、落ち着きを失っていた。

「私は悪くない……
 悪くないの……!」

震える声で、
 同じ言葉を何度も繰り返す。

刑事は淡々と資料を広げた。

「現場の映像、証言、SNSの投稿……
 すべて、あなたが明莉さんを狙っていたことを示しています」

「違う!
 私は……私はただ……楓さんを……!楓さんを助けてあげたかっただけなの」

玲奈の声が裏返った。

その瞳は焦点が合わず、
 涙と怒りと恐怖が混ざったような色をしていた。