喪失の夜に、あなたがいた

夜。
 病室の灯りは落とされ、機械の小さな電子音だけが静かに響いていた。

楓は明莉のベッドの横に座り、
 眠る彼女の横顔を見つめていた。

包帯の白さ。
 少し青ざめた頬。
 規則的な呼吸。

そのすべてが、
 胸の奥を締め付けた。

(……僕は、何をしているんだ)

明莉の手を握りながら、
 楓はゆっくりと目を閉じた。

契約結婚。
 建前。
 責任。
 義務。
 そして──佑輔。

佑輔の存在が、
 楓の胸を強く締め付けた。

(僕は……佑輔の代わりには絶対なれない)

その事実は、
 どれだけ時間が経っても変わらなかった。

佑輔が明莉を愛していたこと。
 明莉が佑輔を愛していたこと。
 その絆は、楓が踏み込んではいけない領域だった。

だから──
 楓はずっと自分の気持ちを押し殺してきた。