喪失の夜に、あなたがいた

「……僕は……」

「明莉さんを守りたいのでしょう?
 それは契約だからではなく、
 あなた自身の気持ちよ。楓、正直に生きなさい」

胸の奥が強く揺れた。

楓は言葉を失い、
 ただ明莉の手を握りしめた。

(……気持ちを隠さなくていい……)

その言葉が、
 静かに胸の奥へ落ちていく。

さくらが病室を出ていくと、
 楓は明莉の寝顔を見つめた。

佑輔のビデオメッセージを見たあと、
 明莉は少しだけ表情が変わった。

涙の跡は残っていたけれど、
 その奥に、
 小さな灯りのようなものが見えた。

(……明莉さん……)

名前を呼ぶ声は、
 自分でも驚くほど弱かった。

楓はゆっくりと息を吸った。

(僕は……どうしたいんだ)

契約。
 義務。
 責任。
 佑輔の存在。

そのすべてが楓の胸を締め付けていた。

でも──
 それ以上に強いものがあった。

(……明莉さんを守りたい)

その想いだけは、
 どれだけ否定しても消えなかった。

楓は初めて、
 自分の感情を整理しようとしていた。