僕は、今までのやりとりで大体状況を掴んだ。
茶髪ロン毛は、おそらくハルミを口説いている。でも、ハルミにはそんな気はないらしく、僕を彼氏ということにして、呼び出し、こいつを厄介払いしようとしているのだろう。おまけに、本名も教えていないところを見るに、相当めんどくさいナンパ野郎のようだ。
だったら、僕がやることは一つ。ハルミに合わせること。その場の思い付きで演じる、エチュードを全うすること。
「なあ、リョウコ。絶対オレの方がいいって。そんなヤツと別れて、オレの女になれって」
「冗談言わないで。私、お金のない男って嫌いなの」
「金なら頑張って稼ぐからさ」
「稼ぐってどれくらい? ねえ、翔太くん。キミの年収言っちゃってよ」
僕は「リョウコ」の胸倉を掴んだ。
「おめえさー、誰に向かってそんな口きいてんだよ! 年収言えだ? バカかおめえ!」
「ご、ごめんさない。翔太くん。怒らないで?」
「で、おめえもさー」と僕は、「リョウコ」の胸倉を掴んだまま、茶髪ロン毛を睨む。
「人の女に手を出しておいて、タダで済むと思ってんの?」
「ああ?」と茶髪ロン毛も負けじと返してくる。
「そ、そんなつもりないじゃんかよ」
なるほど。多少なりとも、びびっているようだ。



