ノスタルジア





駅を出ても、スーツケースはクルクル回る。


そのたびに立ち止まって、制御して、一瞬、「担いだ方が早いかも」という、急がば回れを体現したような考えも浮かんできたが、やっぱり思い直して、左手一つで頑張る。


でも、さすが駅近。すぐに新居のアパートに着いた。


「ん?」


第二声目。「ん?」。


心なしか、内見で来た時よりも、荒んで見える外観。


いやいや。と首を振る。ぶんぶん。


始まるのだ。今日から、ここで。