劇場内。
照明が少し落ちた空間。
隣には彼。
それだけで、 なんか落ち着かない。
あなた、 ポップコーン抱えながら小さく呟く。
「……映画始まったら、 ちゃんと集中するからね。」
彼、 すぐ笑う。
「宣言いるんですね。」
「必要なの。」
「なんでですか?」
あなた、 少しだけ彼を見る。
「〇〇くんに気とられるから」
その瞬間。
彼、 数秒黙った。
それから、 ゆっくり顔覆う。
「……だめだ。」
「え。」
「彼氏冥利に尽きる。」
「大袈裟……」
でも、 彼ほんとに嬉しそう。
あなた、 また顔熱くなる。
上映前の静かな時間。
人が少しずつ席に座っていく。
その中で。
彼、 ふと小さな声で言う。
「今、 普通にデートしてるの、 なんか不思議です。」
その言葉に、 あなたも少し笑う。
「確かに……」
ついこの前まで。
カフェ変えたり、 避けたり。
なのに今。
隣で映画観るのを許してる。
人生分からない。
すると。
彼、 あなたのポップコーン見て小さく笑った。
「……ひとつ食べても怒られません?」
「……食べたいなら買いなよ。」
「一緒に食べるのが嬉しいんです。」
「…っ、」
真っ赤になるあなたを見て
彼、 肩揺らして笑う。
それから。
そっと、 あなたの方へ少し身体を寄せて。
小さな声。
「……今度は俺が買うんで、その時はいくらでも食べてくださいね。」
とポップコーンを取った
「あっ」
驚いて口を開けた瞬間、入れられるポップコーン
「!」
「ふふ。」
そして。
上映開始のアナウンス。
館内が暗くなる。
あなた、 前を向こうとして。
その瞬間。
肘、 少しだけ触れた。
「っ。」
あなた、 小さく肩を揺らす。
暗闇の中で、 小さく聞こえる声。
「……これ、 あと二時間耐えるんですか。」
暗闇の中、 小さく聞こえた彼の声に、
あなたは思わず笑いそうになる。
(……集中できないかもな……)
そう思ってた。
さっきまで恋人みたいな会話して。
肘が触れただけで、 心臓うるさくて。
免疫無さすぎて恥ずかしいくもあった。
絶対、 映画どころじゃないと思ってた。
……のに。
本編が始まった瞬間。
あなた、 すっと画面に引き込まれる。
映像。 音楽。 台詞。
気づけば、 完全に集中していた。
笑うシーンで少し笑って。
緊張感ある場面では、 息を止めて。
感情が揺れる。
その間。
隣の彼のこと、 ちゃんと忘れてる時間すらあった。
でも。
ふとした瞬間。
隣から、 気配を感じる。
視線。あなた、 ちらっと横を見る。
バチっとあう視線、
「!」
「ちゃんと集中してください」
こそっと話す彼
(…君が言う?!)と目でツッコむと
スクスク笑う彼、
でも2人共
すぐにスクリーンに意識が戻る。
切ないシーンになった瞬間。
主人公が、 “ひとりでいる方が楽だ” って言う。
その言葉に、 あなたの胸が少しだけ痛む。
昔の自分みたいだった。
期待しない方が楽。
誰かを特別にすると、 苦しくなる。
だから、 最初から諦める。
そうやって、
ずっと自分を守ってきた。
あなた、 無意識に隣を見る。
彼は、 画面を見たまま。
でも。
その横顔見てると、 不思議なくらい安心する。
“この人なら、 ちゃんと話してもいいかも”
“逃げなくても大丈夫かも”
そんなふうに思えてしまう。
すると。
彼が、 ふとこちらを見た。
目が合う。
暗闇。
スクリーンの光だけ。
彼、 小さく首傾げる。
“どうしたの?”
声にしないまま、 そう聞いてる顔。
あなた、 ほんの少しだけ笑って、 小さく首を横に振る。
すると彼。
それ以上は聞かない。
ただ、 安心させるみたいに、 そっと指先だけ触れてきた。
あなた、 その手を見る。
押しつけない。
でも、 そばに居てくれている。
その優しさに、 胸がじわっと熱くなる。
映画の中で
主人公がまだ、 “ひとりの方が楽” って言ってる。
でも今のあなたは。
“誰かといる安心” を、 ちゃんと知り始めていた。

