🐶かえりみち
仕事終わり。
外はもう暗くなっていて、 昼間の暑さが少しだけ落ち着いてる。
あなたがロッカーを閉めると、 少し離れた場所から声。
「先輩。」
振り返る。
彼。
私服姿。
仕事中より少しラフで、 なんだかそれだけでまた変に意識してしまう。
彼、 近づいてきながら笑う。
「ちゃんと待ってました。」
「……ほんとにいた。」
「ひどくないですか。」
「いや、 ちょっと冗談かと思って……」
「冗談じゃないです。」
さらっと。
あなた、 また心臓が跳ねる。
彼、 そんな反応見て少し笑うけど、 前よりどこか穏やか。
無理に距離を詰めない。
でも、 ちゃんと特別扱いしてくれる。
そのバランスが、なんだかずるい。
一緒に外へ出る。
夜風。
並んで歩く。
前は、 沈黙埋めるみたいに彼がずっと喋ってたのに。
今日は違う。
静かな時間も、 大事にしてる感じ。
それが逆に、 恋人未満っぽくて落ち着かない。
あなた、 誤魔化すみたいに口を開く。
「……なんか、 まだ信じられない。」
「何がです?」
「〇〇くんが、 私のことそういうふうに見てたの。」
彼、 少しだけ目を丸くする。
それから、 苦笑い。
「え、 そんな分かりませんでした?」
「分かんないよ……」
「俺、 結構出してたつもりだったんだけどな。」
「“誰にでも優しい人” にしか見えてなかった……」
その瞬間。
彼、 「あー……」って顔する。
「まあ、 それはそうか。」
「え。」
「先輩、 そもそも俺の好意信じてなかったですもんね。」
あなた、 言葉に詰まる。
彼、 歩幅合わせながら続ける。
「でも、 最近ちょっと悲しかったんですよ。」
「……悲しかった?」
「はい。」
彼、 少し笑う。
「俺、 結構頑張ってアピールしてたのに、 全部“優しい後輩”に変換されてるの分かったから。」
「……。」
「脈なし判定されてる感すごかった。」
あなた、 恥ずかしくなって顔を逸らす。
すると彼、 少しだけ声を落とした。
「でも今日、 ちゃんと“ドキドキする”って聞けたから。」
「……。」
「だいぶ自信つきました。」
その言い方が、仕草が 嬉しそうで。
あなた、 また胸が熱くなる。
駅前の信号で止まる。
赤信号。
隣に立つ彼。
ふと、 彼の手が少し近づく。
でも、 触れない。
触れそうで、 触れない距離。
彼、 前を向いたまま小さく言う。
「……手、 繋ぎたいなって思ってくれてます?」
「っ。」
あなた、 一瞬で顔が熱くなる。
「わ、 分かるの……?」
「分かります。」
彼、 少し笑う。
「俺も同じこと考えてるから。」
心臓、 うるさい。
信号待ちの人たち。 車の音。 夜風。
全部あるのに、 隣の彼しか意識できない。
あなた、 視線を落として小さく言う。
「……付き合ってもないのに。」
すると彼、 少しだけ黙った。
それから、 すごく自然な声で聞く。
「じゃあ、 付き合います?」
「っえ゛」
思わず変な声出る。
彼、 吹き出した。
「そんな驚く?」
「いや、 急すぎるでしょ……!」
「でも、 もうお互い好きなの分かってますよね。」
「……。」
否定できない。
彼、 少しだけ照れたみたいに笑う。
「俺、 順番ちゃんとしたいタイプなんですよ。」
「……。」
「だから、 本当はちゃんと改めて言おうと思ってました。」
信号が青になる。
でも、 二人ともすぐ歩き出せない。
彼、 あなたを見る。
いつもの柔らかい顔。
でも今は、 ちゃんと緊張してる。
「先輩。」
「……なに。」
「好きです。」
まっすぐ。
逃げ道ないくらい、 優しい声。
「一緒にいたいです。」
胸がぎゅっとなる。
彼、 少し笑った。
「朝カフェも、 仕事終わりも、 もっと隣取りたい。」
「……。」
「だから、 俺と付き合ってください。」
夜の駅前。
人はたくさんいるのに、 そこだけ静かみたいに感じる。
あなた、 言葉が出ない。
だって。
恋愛映画の中だけだと思ってた。
“ちゃんと選ばれる”なんて。
でも今。
目の前の彼は、 ずっとあなたを見て、 逃げないで、 ちゃんと言葉にしてくれてる。
あなた、 目を伏せて、 でも少し笑った。
「……逃げても、 追いかけてくれる?」
彼、 一瞬目を丸くして。
次の瞬間、 ふわっと嬉しそうに笑う。
「もちろん。」
その返事が、 あまりにも迷いなくて。
あなた、 胸の奥がじんわり熱くなる。
彼、 少しだけ身体を近づける。
「だから。」
「……。」
「今回は逃げないで、 捕まってくれません?」
その言い方に、 思わず笑ってしまう。
「なにそれ……」
「だめですか?」
「……。」
だめじゃない。
むしろ。
こんなふうに、 ちゃんと欲しがってもらえること、 たぶんずっと待ってた。
あなた、 小さく息を吐く。
それから、 照れながら言った。
「……よろしくお願いします。」
一瞬。
彼、 本当に固まる。
「……え。」
「え?」
「今、 OK……?」
「……うん。」
次の瞬間。
彼、 めちゃくちゃ嬉しそうに笑った。
その顔、 今まで見た中で一番だった。
「ほ、ほんとに?」
「ほんとだよ……」
「ほんとに?」
「知らない……」
彼、 堪えきれないみたいに笑う。
でも。
次第にその笑いが、 安心したみたいに柔らかくなる。
「……嬉しい。」
ぽつり。
その声が、 妙に胸にくる。
彼、 少しだけ緊張した顔で、 あなたを見る。
「……じゃあ今、 手繋いでもいいですか。」
「確認するんだ。」
「大事なんで。」
あなた、 少し笑う。
それから、 小さく手を差し出した。
彼、 一瞬息を止める。
そして。
すごく大事なもの触るみたいに、 そっと手を握った。
温かい。
指先が触れただけなのに、 心臓が跳ねる。
あなた、 思わず笑ってしまう。
「……ほんとにドキドキする。」
「俺もです。」
彼、 繋いだ手を少しだけ握り直す。
「でも、 もう避けられないから安心。」
「まだ分かんないよ?」
「追いかけるんで。」
即答。
あなた、 また笑う。
彼、 そんなあなたを見て、 目を細めた。
「先輩。」
「ん?」
「明日、 朝カフェ行きましょうね。」
「……うーーーーん。」
彼、 ぴたりと止まる。
「え。」
あなた、 繋いだ手のまま、 ちょっと困った顔。
「……話し合いましょう……」
「なにを。」
彼、 じわじわ不安そうになる。
あなた、 思わず笑う。
「いや、 絶対落ち着かないもん。」
「俺も落ち着かないです。」
「じゃあだめじゃん。」
「なんでですか。」
彼、 本気で不服そう。
あなた、 笑いながら続ける。
「朝活って、 本読むとか、 映画観るとか、 ぼーっとする時間なの。」
「はい。」
「絶対〇〇くんいたら無理。」
「……。」
「チラチラ見ちゃうし。」
その瞬間。
彼、 分かりやすく顔緩む。
「え、 可愛い。」
「ちょっと…」
「すみません。」
全然反省してない顔。
あなた、 繋いだ手を軽く揺らしながら言う。
「だから、 頻度とか距離感、 ちゃんと話したい。」
彼、 少しだけ真面目な顔になる。
「……あー。」
理解した顔。
「ひとり時間なくなるの怖い?」
「うん。」
即答。
あなた、 少し視線を落とす。
「好きとか、 一緒にいたいとかは思う。」
「……。」
「でも、 全部恋愛中心になると、 息苦しくなるタイプなの。」
夜風が吹く。
彼は急かさない。
ちゃんと聞いてる。
あなた、 少し安心して続ける。
「だから…… 好きだけど、 毎日ずっとべったりとかは、 多分無理で……」
「……。」
「あと、 朝の時間は、私にとって結構大事な時間。」
そこまで言って、 恐る恐る彼を見る。
引かれるかな、 って少し思った。
でも彼は。
数秒考えてから、 ふっと笑った。
「……安心した。」
「え?」
「もっと重い話かと思った。」
彼、 肩揺らして笑う。
「むしろ、 ちゃんと言ってくれて嬉しいです。」
「……。」
「俺、 先輩のひとり時間好きですよ。」
「え。」
「だって、 そういう時間大事にしてる先輩、 いいなって思ってたし。」
その返事が、 予想外すぎて。
あなた、 少し目を丸くする。
彼、 繋いだ手を軽く握り直す。
「だから、 朝活は“毎回一緒”じゃなくていいです。」
「……。」
「たまに隣座れたら嬉しい。」
柔らかい声。
「あと、 先輩がひとりになりたい日は、 ちゃんと言ってくれたら待てます。」
胸が、 じわっと熱くなる。
彼、 少し笑った。
「……逃げられるより、 ちゃんと教えてもらえる方が安心するので。」
その言葉を聞いた瞬間。
あなた、 心の奥の力が、 ふっと抜けた。
「……よかった。」
自然に、 ふにゃっと笑ってしまう。
本当に安心した時の顔。
彼、 その表情を見て、 一瞬固まる。
「……。」
彼、 急に黙った。
あなた、 顔を隠したまま、 不思議に思って少しだけ見る。
彼。
完全に固まってる。
「……〇〇くん?」
「……。」
返事が遅い。
耳まで赤い。
あなた、 少し焦る。
「え、 どうしたの……?」
すると彼、 片手で顔覆ったまま、 低く呟く。
「……今、 心の声漏れかけた。」
「え。」
あなた、 きょとんとする。
彼、 深く息吐く。
「危ない……」
「な、 何が……」
彼、 ちらっとあなたを見る。
その目が、 いつもより熱っぽくて。
あなた、 どきっとする。
「……先輩、 今めちゃくちゃ可愛いんですよ。」
「っ。」
「安心してる顔とか、 照れてる顔とか。」
彼、 困ったみたいに笑う。
「だから今、 “このままずっと甘やかしたい”って思った。」
「……え、 あ……」
一気に顔が熱くなる。
彼、 そこで止まらない。
「家で、 だらだらして、 安心した顔させて。」
「……。」
「でも、 俺のことでドキドキもしてほしいなとか思って。」
あなた、 完全に思考停止。
彼、 そこでハッとしたみたいに目を逸らす。
「……やば、 言いすぎた。」
「……。」
「ひ、引きました?」
あなた、 真っ赤なまま首を横に振る。
彼、 少し安心したみたいに息を吐く。
でも次の瞬間、 小さく笑った。
「……先輩、 今泣きそうなくらい恥ずかしそう。」
「だ、 だって……!」
「その顔、 ほんと危ない。」
「危ないって何……」
彼、 繋いだ手を少しだけ引き寄せる。
「もっと、 俺のこと欲しくなってほしくなる。」
その声が低くて。
優しいのに、 ちゃんと男の人で。
あなた、 心臓が苦しくなる。
彼、 でもすぐ、 ふっと力抜いたみたいに笑った。
「……でも今日はここまでにします。」
「え。」
「これ以上言うと、 先輩また逃げそうだから。」
仕事終わり。
外はもう暗くなっていて、 昼間の暑さが少しだけ落ち着いてる。
あなたがロッカーを閉めると、 少し離れた場所から声。
「先輩。」
振り返る。
彼。
私服姿。
仕事中より少しラフで、 なんだかそれだけでまた変に意識してしまう。
彼、 近づいてきながら笑う。
「ちゃんと待ってました。」
「……ほんとにいた。」
「ひどくないですか。」
「いや、 ちょっと冗談かと思って……」
「冗談じゃないです。」
さらっと。
あなた、 また心臓が跳ねる。
彼、 そんな反応見て少し笑うけど、 前よりどこか穏やか。
無理に距離を詰めない。
でも、 ちゃんと特別扱いしてくれる。
そのバランスが、なんだかずるい。
一緒に外へ出る。
夜風。
並んで歩く。
前は、 沈黙埋めるみたいに彼がずっと喋ってたのに。
今日は違う。
静かな時間も、 大事にしてる感じ。
それが逆に、 恋人未満っぽくて落ち着かない。
あなた、 誤魔化すみたいに口を開く。
「……なんか、 まだ信じられない。」
「何がです?」
「〇〇くんが、 私のことそういうふうに見てたの。」
彼、 少しだけ目を丸くする。
それから、 苦笑い。
「え、 そんな分かりませんでした?」
「分かんないよ……」
「俺、 結構出してたつもりだったんだけどな。」
「“誰にでも優しい人” にしか見えてなかった……」
その瞬間。
彼、 「あー……」って顔する。
「まあ、 それはそうか。」
「え。」
「先輩、 そもそも俺の好意信じてなかったですもんね。」
あなた、 言葉に詰まる。
彼、 歩幅合わせながら続ける。
「でも、 最近ちょっと悲しかったんですよ。」
「……悲しかった?」
「はい。」
彼、 少し笑う。
「俺、 結構頑張ってアピールしてたのに、 全部“優しい後輩”に変換されてるの分かったから。」
「……。」
「脈なし判定されてる感すごかった。」
あなた、 恥ずかしくなって顔を逸らす。
すると彼、 少しだけ声を落とした。
「でも今日、 ちゃんと“ドキドキする”って聞けたから。」
「……。」
「だいぶ自信つきました。」
その言い方が、仕草が 嬉しそうで。
あなた、 また胸が熱くなる。
駅前の信号で止まる。
赤信号。
隣に立つ彼。
ふと、 彼の手が少し近づく。
でも、 触れない。
触れそうで、 触れない距離。
彼、 前を向いたまま小さく言う。
「……手、 繋ぎたいなって思ってくれてます?」
「っ。」
あなた、 一瞬で顔が熱くなる。
「わ、 分かるの……?」
「分かります。」
彼、 少し笑う。
「俺も同じこと考えてるから。」
心臓、 うるさい。
信号待ちの人たち。 車の音。 夜風。
全部あるのに、 隣の彼しか意識できない。
あなた、 視線を落として小さく言う。
「……付き合ってもないのに。」
すると彼、 少しだけ黙った。
それから、 すごく自然な声で聞く。
「じゃあ、 付き合います?」
「っえ゛」
思わず変な声出る。
彼、 吹き出した。
「そんな驚く?」
「いや、 急すぎるでしょ……!」
「でも、 もうお互い好きなの分かってますよね。」
「……。」
否定できない。
彼、 少しだけ照れたみたいに笑う。
「俺、 順番ちゃんとしたいタイプなんですよ。」
「……。」
「だから、 本当はちゃんと改めて言おうと思ってました。」
信号が青になる。
でも、 二人ともすぐ歩き出せない。
彼、 あなたを見る。
いつもの柔らかい顔。
でも今は、 ちゃんと緊張してる。
「先輩。」
「……なに。」
「好きです。」
まっすぐ。
逃げ道ないくらい、 優しい声。
「一緒にいたいです。」
胸がぎゅっとなる。
彼、 少し笑った。
「朝カフェも、 仕事終わりも、 もっと隣取りたい。」
「……。」
「だから、 俺と付き合ってください。」
夜の駅前。
人はたくさんいるのに、 そこだけ静かみたいに感じる。
あなた、 言葉が出ない。
だって。
恋愛映画の中だけだと思ってた。
“ちゃんと選ばれる”なんて。
でも今。
目の前の彼は、 ずっとあなたを見て、 逃げないで、 ちゃんと言葉にしてくれてる。
あなた、 目を伏せて、 でも少し笑った。
「……逃げても、 追いかけてくれる?」
彼、 一瞬目を丸くして。
次の瞬間、 ふわっと嬉しそうに笑う。
「もちろん。」
その返事が、 あまりにも迷いなくて。
あなた、 胸の奥がじんわり熱くなる。
彼、 少しだけ身体を近づける。
「だから。」
「……。」
「今回は逃げないで、 捕まってくれません?」
その言い方に、 思わず笑ってしまう。
「なにそれ……」
「だめですか?」
「……。」
だめじゃない。
むしろ。
こんなふうに、 ちゃんと欲しがってもらえること、 たぶんずっと待ってた。
あなた、 小さく息を吐く。
それから、 照れながら言った。
「……よろしくお願いします。」
一瞬。
彼、 本当に固まる。
「……え。」
「え?」
「今、 OK……?」
「……うん。」
次の瞬間。
彼、 めちゃくちゃ嬉しそうに笑った。
その顔、 今まで見た中で一番だった。
「ほ、ほんとに?」
「ほんとだよ……」
「ほんとに?」
「知らない……」
彼、 堪えきれないみたいに笑う。
でも。
次第にその笑いが、 安心したみたいに柔らかくなる。
「……嬉しい。」
ぽつり。
その声が、 妙に胸にくる。
彼、 少しだけ緊張した顔で、 あなたを見る。
「……じゃあ今、 手繋いでもいいですか。」
「確認するんだ。」
「大事なんで。」
あなた、 少し笑う。
それから、 小さく手を差し出した。
彼、 一瞬息を止める。
そして。
すごく大事なもの触るみたいに、 そっと手を握った。
温かい。
指先が触れただけなのに、 心臓が跳ねる。
あなた、 思わず笑ってしまう。
「……ほんとにドキドキする。」
「俺もです。」
彼、 繋いだ手を少しだけ握り直す。
「でも、 もう避けられないから安心。」
「まだ分かんないよ?」
「追いかけるんで。」
即答。
あなた、 また笑う。
彼、 そんなあなたを見て、 目を細めた。
「先輩。」
「ん?」
「明日、 朝カフェ行きましょうね。」
「……うーーーーん。」
彼、 ぴたりと止まる。
「え。」
あなた、 繋いだ手のまま、 ちょっと困った顔。
「……話し合いましょう……」
「なにを。」
彼、 じわじわ不安そうになる。
あなた、 思わず笑う。
「いや、 絶対落ち着かないもん。」
「俺も落ち着かないです。」
「じゃあだめじゃん。」
「なんでですか。」
彼、 本気で不服そう。
あなた、 笑いながら続ける。
「朝活って、 本読むとか、 映画観るとか、 ぼーっとする時間なの。」
「はい。」
「絶対〇〇くんいたら無理。」
「……。」
「チラチラ見ちゃうし。」
その瞬間。
彼、 分かりやすく顔緩む。
「え、 可愛い。」
「ちょっと…」
「すみません。」
全然反省してない顔。
あなた、 繋いだ手を軽く揺らしながら言う。
「だから、 頻度とか距離感、 ちゃんと話したい。」
彼、 少しだけ真面目な顔になる。
「……あー。」
理解した顔。
「ひとり時間なくなるの怖い?」
「うん。」
即答。
あなた、 少し視線を落とす。
「好きとか、 一緒にいたいとかは思う。」
「……。」
「でも、 全部恋愛中心になると、 息苦しくなるタイプなの。」
夜風が吹く。
彼は急かさない。
ちゃんと聞いてる。
あなた、 少し安心して続ける。
「だから…… 好きだけど、 毎日ずっとべったりとかは、 多分無理で……」
「……。」
「あと、 朝の時間は、私にとって結構大事な時間。」
そこまで言って、 恐る恐る彼を見る。
引かれるかな、 って少し思った。
でも彼は。
数秒考えてから、 ふっと笑った。
「……安心した。」
「え?」
「もっと重い話かと思った。」
彼、 肩揺らして笑う。
「むしろ、 ちゃんと言ってくれて嬉しいです。」
「……。」
「俺、 先輩のひとり時間好きですよ。」
「え。」
「だって、 そういう時間大事にしてる先輩、 いいなって思ってたし。」
その返事が、 予想外すぎて。
あなた、 少し目を丸くする。
彼、 繋いだ手を軽く握り直す。
「だから、 朝活は“毎回一緒”じゃなくていいです。」
「……。」
「たまに隣座れたら嬉しい。」
柔らかい声。
「あと、 先輩がひとりになりたい日は、 ちゃんと言ってくれたら待てます。」
胸が、 じわっと熱くなる。
彼、 少し笑った。
「……逃げられるより、 ちゃんと教えてもらえる方が安心するので。」
その言葉を聞いた瞬間。
あなた、 心の奥の力が、 ふっと抜けた。
「……よかった。」
自然に、 ふにゃっと笑ってしまう。
本当に安心した時の顔。
彼、 その表情を見て、 一瞬固まる。
「……。」
彼、 急に黙った。
あなた、 顔を隠したまま、 不思議に思って少しだけ見る。
彼。
完全に固まってる。
「……〇〇くん?」
「……。」
返事が遅い。
耳まで赤い。
あなた、 少し焦る。
「え、 どうしたの……?」
すると彼、 片手で顔覆ったまま、 低く呟く。
「……今、 心の声漏れかけた。」
「え。」
あなた、 きょとんとする。
彼、 深く息吐く。
「危ない……」
「な、 何が……」
彼、 ちらっとあなたを見る。
その目が、 いつもより熱っぽくて。
あなた、 どきっとする。
「……先輩、 今めちゃくちゃ可愛いんですよ。」
「っ。」
「安心してる顔とか、 照れてる顔とか。」
彼、 困ったみたいに笑う。
「だから今、 “このままずっと甘やかしたい”って思った。」
「……え、 あ……」
一気に顔が熱くなる。
彼、 そこで止まらない。
「家で、 だらだらして、 安心した顔させて。」
「……。」
「でも、 俺のことでドキドキもしてほしいなとか思って。」
あなた、 完全に思考停止。
彼、 そこでハッとしたみたいに目を逸らす。
「……やば、 言いすぎた。」
「……。」
「ひ、引きました?」
あなた、 真っ赤なまま首を横に振る。
彼、 少し安心したみたいに息を吐く。
でも次の瞬間、 小さく笑った。
「……先輩、 今泣きそうなくらい恥ずかしそう。」
「だ、 だって……!」
「その顔、 ほんと危ない。」
「危ないって何……」
彼、 繋いだ手を少しだけ引き寄せる。
「もっと、 俺のこと欲しくなってほしくなる。」
その声が低くて。
優しいのに、 ちゃんと男の人で。
あなた、 心臓が苦しくなる。
彼、 でもすぐ、 ふっと力抜いたみたいに笑った。
「……でも今日はここまでにします。」
「え。」
「これ以上言うと、 先輩また逃げそうだから。」

