🐶2休憩室で
「避けるなら、 俺じゃなくて他の人にしてください。」
その言葉に、 あなたは反射的に返していた。
「無理だよ、」
「え!」
彼、 珍しく分かりやすく反応する。
少し目を見開いて、 ほんのちょっとムッとした顔。
「なんでですか。」
その聞き方が、 予想以上に真剣で。
あなた、 一気に恥ずかしくなる。
「いや…… だって……」
彼、 じっと見る。
逃げられない。
あなた、 観念したみたいに小さく言った。
「〇〇くん、 ドキドキするもん。」
沈黙。
休憩室の空気が止まる。
彼、 数秒完全に固まった。
あなた、 自分で言っておいて、 顔から火が出そう。
「……っ、 いや違、 なんか、 そういう意味じゃなくて……!」
「どういう意味ですか。」
即。
でも声、 少し掠れてる。
彼、 さっきまでの余裕どこいったのってくらい、 真っ直ぐ見てくる。
あなた、 視線泳がせながら必死に言葉探す。
「なんか…… 急に近づかれると、 心臓うるさいし……」
「……。」
「優しいし、 距離近いし、 そういうこと言うし……」
言いながら、 どんどん墓穴掘ってる気がする。
彼、 途中から片手で口元隠してる。
「……やば。」
「え。」
「嬉しすぎる。」
小さく呟いて、 深く息を吐く。
あなた、 机に突っ伏したくなる。
「…………」
「先輩」
「…………」
「喋ってくださいよ」
「やだ。」
「可愛い。」
「やめて。」
彼、 でも止まらない。
むしろ、 ずっと我慢してたものが少し漏れ始めたみたいに笑う。
「先輩、 今まで俺ばっか意識してると思ってた。」
「……。」
「ちゃんとドキドキしてたんだ。」
その言い方が、 あまりにも嬉しそうで。
あなた、 耐えきれず顔をそらす。
彼、そんなあなたを見ながら、 少しだけ声を落とした。
「……ねえ。」
「……なに。」
「今、 ちょっと触っても逃げない?」
「っ。」
顔を上げる。
彼、 冗談っぽく笑ってる。
でも、 目だけ本気。
あなた、一瞬で心臓が跳ね上がる。
「な、なんでそんな確認するの……」
「逃げられると…傷つくから。」
「……。」
「前科あるし。」
カフェ変えた件。
「!それは……!」
彼、すぐ食いつく。
「それは?」
あなた、 顔が熱くなるのを感じながら、 小さく反論する。
「〇〇くんのせいだよ……」
その瞬間。
彼、 一回ぽかんとして。
次の瞬間、 ふにゃって顔が崩れた。
「そっか、 そっかぁ。」
嬉しさ隠せてない笑い方。
「俺のせいですか。」
「……。」
「へぇ……」
じわじわ噛み締めるみたいに繰り返す。
あなた、 恥ずかしくてたまらない。
「そんな嬉しそうにしないで……」
「無理です。」
即答。
彼、 袖摘んだまま、 完全に顔が緩んでる。
「だって先輩、 “俺を意識したせいであんな事した”ってことでしょ?」
「……」
「え…違うんですか?」
「……違わないけど……」
彼、 耐えきれないみたいに俯いて笑う。
肩揺れてる。
「やば…… 今日ずっと嬉しい。」
「もうやだ……」
あなた、 顔覆う。
でも彼、 全然離れない。
むしろ、 少しだけ距離近づけてくる。
「先輩。」
「……。」
「俺、 結構頑張ってたんですよ。」
「……知ってる。」
「ほんとに?」
「うん……」
彼、 そこで少し静かになる。
さっきまで笑ってたのに、 今度はすごく優しい顔。
「じゃあ、 逃げながらもちゃんと見てくれてたんだ。」
「……。」
図星。
あなた、 小さく頷く。
彼、それ見て、 また嬉しそうに笑った。
「よかった。」
「何回それ言うの……」
「だって、 ずっと不安だったんです。」
「……不安?」
「先輩、 ほんとに俺のこと恋愛対象外っぽかったから。」
「そんなこと……」
言いかけて止まる。
最初は、 本当にそうだった。
“後輩” “人懐っこい子” “誰にでも優しい人”
そうやって、 恋愛として見ないようにしてた。
でも。
彼はちゃんと、 そこを越えようとしてくれてた。
あなた、 少しだけ彼を見る。
彼も見てる。
目が合う。
彼、 ふっと笑って、 小さく聞いた。
「……じゃあ今は?」
静かな声。
でも、 逃がさないみたいに優しい。
あなた、 息が詰まる。
彼は、 まだあなたの袖を軽く摘んだまま。
その熱が、 変にリアルだった。
休憩室には、 遠くで誰かが話してる声。
でもここだけ、 妙に静かに感じる。
あなた、 視線を逸らそうとする。
でも彼、 少し笑って言う。
「逃げないでください。」
「……。」
「今、 大事なとこなんで。」
「ずるい……」
「はい。」
認めるんだ。
彼、 ちょっと楽しそうに笑う。
でも、 ちゃんと緊張もしてる。
あなたには分かる。
彼だって、 余裕だけじゃない。
あなたの返事、 怖いんだと思う。
その事実に、 胸がきゅっとなる。
あなた、 観念したみたいに小さく息を吐く。
「……恋愛対象、 です。」
彼、 ぴたりと止まる。
あなた、 もう顔上げられない。
でも止まれなくて、 小さく続ける。
「めちゃくちゃ、 意識してる……」
沈黙。
数秒。
それから。
「……っはぁ〜〜……」
彼、 深く息吐いて、 片手で顔覆った。
「やばい……嬉しい……」
「……。」
「今、 めちゃくちゃニヤけてる自信ある。」
「見なくても分かる……」
彼、 肩揺らして笑う。
でも次の瞬間。
ふっと静かになって、 ゆっくりあなたを見る。
その目が、 今までで一番優しくて。
あなた、 また心臓が跳ねる。
彼、 少しだけ身体を近づける。
でも、 ちゃんとあなたが逃げない距離で止まる。
「先輩。」
「……なに。」
「俺、 頑張ってよかった。」
その言葉が、 思った以上にまっすぐで。
あなた、 胸が熱くなる。
彼、 小さく笑う。
「ずっと、 脈ないと思いながら…」
「……」
「でも止めれ無かったんです」
視線が合う
「ほんとガード固いというか…。」
「……。」
「避けられても、 カフェ変えられても、
でも… なんか完全には嫌われてない気がして。」
彼、 少し照れたみたいに笑った。
「だから、 しつこくしてました。」
「自覚あったんだ……」
「ありました。」
即答。
思わず、 あなたも笑ってしまう。
すると彼、 その笑った顔見て、 一瞬目を細めた。
「……その顔、 好きです。」
「っ。」
さらっと。
あなた、 また固まる。
彼、 すぐ笑う。
「ほらまた。 すぐ固まる。」
あなた、 少しだけ視線を落として、 小さく言う。
「……頑張ってくれて、 ありがとう。」
その瞬間。
彼、 ほんとに不意打ち食らったみたいな顔をした。
「……。」
言葉が止まる。
さっきまで結構余裕そうに笑ってたのに、 今はただ、 じっとあなたを見てる。
あなた、 少し不安になる。
「……え、 なにその顔。」
すると彼、 ふっと力抜けたみたいに笑った。
でも。
その笑い方、 ちょっと照れてる。
「いや…… なんか。」
彼、 片手で口元触る。
「“好き”より今の方が効きました。」
「えっ。」
「だって、 頑張ってたの、 ちゃんと見てくれてたってことでしょ。」
「……。」
図星。
あなた、 また恥ずかしくなる。
彼、 少し目を細める。
「俺、 結構空回ってる気してたんですよ。」
「そんなことない。」
「ほんとに?」
「……うん。」
あなた、 小さく笑う。
「ちゃんと、 嬉しかった。」
朝カフェで、 話しかけられたことも。
映画の話したことも。
距離近くて困ったことも。
避けたくせに、 会えなくなって寂しかったことも。
全部。
彼、 その言葉を聞いて、 ゆっくり息を吐いた。
安心したみたいに。
それから、 少しだけ照れた顔で笑う。
「……よかった。」
またそれ言う。
でも今度は、 あなたも少し笑ってしまう。
彼、 そんなあなたを見ながら、 そっと摘んでた袖を指先で揺らした。
「じゃあ、 これからは逃げないでくださいね。」
「……努力します。」
「“努力”なんだ。」
「だってまだ、 ドキドキしてるし……」
「俺もです。」
即答。
あなた、 思わず彼を見る。
彼、 ちょっと困ったみたいに笑った。
「先輩相手だと、 普通に緊張します。」
その言葉に、 あなたは少し目を丸くする。
「……〇〇くんでも緊張するんだ。」
「しますよ。」
彼、 苦笑いする。
「むしろ最近ずっと、 心臓忙しいです。」
「……。」
「先輩、 急に可愛いこと言うし。」
「っ。」
あなた、 また顔が熱くなる。
彼、 そんな反応見て笑う。
でも、 前みたいにからかうだけじゃない。
嬉しそうで、 大事そうに見てくる。
その視線に、 またドキドキする。
休憩室の時計が、 カチ、って鳴る。
そろそろ戻らなきゃいけない時間。
でも。
どっちも、 なかなか立ち上がらない。
彼、 袖を摘んでた指を、 名残惜しそうに離した。
その小さな動きに、 胸がきゅっとする。
「……戻りますか。」
「……うん。」
でもあなた、 立ち上がりながら小さく言う。
「なんか変な感じ。」
「何がです?」
「今まで普通に喋ってたのに、 急に全部意識しちゃう……」
彼、 少し笑う。
「俺はずっと意識してましたけどね。」
「……。」
「先輩だけ今さらなんですよ。出遅れましたね」
「うるさい……」
彼、 肩揺らして笑う。
それから、 休憩室のドア開けながら、 ふと振り返った。
「先輩。」
「ん?」
「今日、 朝カフェ行きます?」
「え。」
急な質問。
あなた、 瞬きする。
彼、 少し照れたみたいに笑った。
「ちゃんと、 隣座る許可取ってから行きます。」
「……。」
「前みたいに逃げられたくないので。」
その言い方が、 少し可愛くて。
あなた、 思わず笑ってしまう。
「……来てもいいよ。」
彼、 一瞬止まる。
それから、 嬉しそうに目を細めた。
「やば。 今日ずっと幸せ。」
あなた、 照れ隠しみたいに笑う。
「大袈裟だなあ。」
「大袈裟じゃないです。」
彼、 休憩室のドアに手を掛けたまま、 少しだけこちらを見る。
「ん?」
「今日、 送りますから。」
「……え。」
あまりにも自然に言われて、 一瞬理解が遅れる。
彼、 さらっと続ける。
「仕事終わり。」
「いや、 近いし……」
「知ってます。」
「……。」
「でも、 送りたい。」
静かな声。
前みたいな、 押しの強さじゃない。
ちゃんと、 あなたの反応を見ながら言ってる。
だから余計、 断りづらい。
あなた、 視線逸らしながら小さく言う。
「……そんな、 彼氏みたいなこと。」
その瞬間。
彼、 ぴたりと止まる。
数秒。
それから、 少しだけ笑った。
「なりたいですけどね。」
「っ。」
即死。
あなた、 思わず顔を覆う。
「むり…… 急にそういうの……」
彼、 堪えきれないみたいに笑う。
「先輩、 反応分かりやすすぎる。」
「だって……!」
「可愛い。」
「そのワード禁止!」
彼、 笑いながら「はーい」って返事する。
でも。
次にあなたを見る目は、 ちゃんと優しかった。
「……無理させるつもりないです。」
「……。」
「だから、 嫌なら断ってください。」
その言い方に、 胸がじわっと温かくなる。
あなた、 少しだけ彼を見る。
彼、 待ってる。
急かさない。
あなたは小さく息を吐いて、 照れたまま言った。
「……じゃあ、 お願いします。」
その瞬間。
彼、 びっくりするくらい嬉しそうに笑った。
「避けるなら、 俺じゃなくて他の人にしてください。」
その言葉に、 あなたは反射的に返していた。
「無理だよ、」
「え!」
彼、 珍しく分かりやすく反応する。
少し目を見開いて、 ほんのちょっとムッとした顔。
「なんでですか。」
その聞き方が、 予想以上に真剣で。
あなた、 一気に恥ずかしくなる。
「いや…… だって……」
彼、 じっと見る。
逃げられない。
あなた、 観念したみたいに小さく言った。
「〇〇くん、 ドキドキするもん。」
沈黙。
休憩室の空気が止まる。
彼、 数秒完全に固まった。
あなた、 自分で言っておいて、 顔から火が出そう。
「……っ、 いや違、 なんか、 そういう意味じゃなくて……!」
「どういう意味ですか。」
即。
でも声、 少し掠れてる。
彼、 さっきまでの余裕どこいったのってくらい、 真っ直ぐ見てくる。
あなた、 視線泳がせながら必死に言葉探す。
「なんか…… 急に近づかれると、 心臓うるさいし……」
「……。」
「優しいし、 距離近いし、 そういうこと言うし……」
言いながら、 どんどん墓穴掘ってる気がする。
彼、 途中から片手で口元隠してる。
「……やば。」
「え。」
「嬉しすぎる。」
小さく呟いて、 深く息を吐く。
あなた、 机に突っ伏したくなる。
「…………」
「先輩」
「…………」
「喋ってくださいよ」
「やだ。」
「可愛い。」
「やめて。」
彼、 でも止まらない。
むしろ、 ずっと我慢してたものが少し漏れ始めたみたいに笑う。
「先輩、 今まで俺ばっか意識してると思ってた。」
「……。」
「ちゃんとドキドキしてたんだ。」
その言い方が、 あまりにも嬉しそうで。
あなた、 耐えきれず顔をそらす。
彼、そんなあなたを見ながら、 少しだけ声を落とした。
「……ねえ。」
「……なに。」
「今、 ちょっと触っても逃げない?」
「っ。」
顔を上げる。
彼、 冗談っぽく笑ってる。
でも、 目だけ本気。
あなた、一瞬で心臓が跳ね上がる。
「な、なんでそんな確認するの……」
「逃げられると…傷つくから。」
「……。」
「前科あるし。」
カフェ変えた件。
「!それは……!」
彼、すぐ食いつく。
「それは?」
あなた、 顔が熱くなるのを感じながら、 小さく反論する。
「〇〇くんのせいだよ……」
その瞬間。
彼、 一回ぽかんとして。
次の瞬間、 ふにゃって顔が崩れた。
「そっか、 そっかぁ。」
嬉しさ隠せてない笑い方。
「俺のせいですか。」
「……。」
「へぇ……」
じわじわ噛み締めるみたいに繰り返す。
あなた、 恥ずかしくてたまらない。
「そんな嬉しそうにしないで……」
「無理です。」
即答。
彼、 袖摘んだまま、 完全に顔が緩んでる。
「だって先輩、 “俺を意識したせいであんな事した”ってことでしょ?」
「……」
「え…違うんですか?」
「……違わないけど……」
彼、 耐えきれないみたいに俯いて笑う。
肩揺れてる。
「やば…… 今日ずっと嬉しい。」
「もうやだ……」
あなた、 顔覆う。
でも彼、 全然離れない。
むしろ、 少しだけ距離近づけてくる。
「先輩。」
「……。」
「俺、 結構頑張ってたんですよ。」
「……知ってる。」
「ほんとに?」
「うん……」
彼、 そこで少し静かになる。
さっきまで笑ってたのに、 今度はすごく優しい顔。
「じゃあ、 逃げながらもちゃんと見てくれてたんだ。」
「……。」
図星。
あなた、 小さく頷く。
彼、それ見て、 また嬉しそうに笑った。
「よかった。」
「何回それ言うの……」
「だって、 ずっと不安だったんです。」
「……不安?」
「先輩、 ほんとに俺のこと恋愛対象外っぽかったから。」
「そんなこと……」
言いかけて止まる。
最初は、 本当にそうだった。
“後輩” “人懐っこい子” “誰にでも優しい人”
そうやって、 恋愛として見ないようにしてた。
でも。
彼はちゃんと、 そこを越えようとしてくれてた。
あなた、 少しだけ彼を見る。
彼も見てる。
目が合う。
彼、 ふっと笑って、 小さく聞いた。
「……じゃあ今は?」
静かな声。
でも、 逃がさないみたいに優しい。
あなた、 息が詰まる。
彼は、 まだあなたの袖を軽く摘んだまま。
その熱が、 変にリアルだった。
休憩室には、 遠くで誰かが話してる声。
でもここだけ、 妙に静かに感じる。
あなた、 視線を逸らそうとする。
でも彼、 少し笑って言う。
「逃げないでください。」
「……。」
「今、 大事なとこなんで。」
「ずるい……」
「はい。」
認めるんだ。
彼、 ちょっと楽しそうに笑う。
でも、 ちゃんと緊張もしてる。
あなたには分かる。
彼だって、 余裕だけじゃない。
あなたの返事、 怖いんだと思う。
その事実に、 胸がきゅっとなる。
あなた、 観念したみたいに小さく息を吐く。
「……恋愛対象、 です。」
彼、 ぴたりと止まる。
あなた、 もう顔上げられない。
でも止まれなくて、 小さく続ける。
「めちゃくちゃ、 意識してる……」
沈黙。
数秒。
それから。
「……っはぁ〜〜……」
彼、 深く息吐いて、 片手で顔覆った。
「やばい……嬉しい……」
「……。」
「今、 めちゃくちゃニヤけてる自信ある。」
「見なくても分かる……」
彼、 肩揺らして笑う。
でも次の瞬間。
ふっと静かになって、 ゆっくりあなたを見る。
その目が、 今までで一番優しくて。
あなた、 また心臓が跳ねる。
彼、 少しだけ身体を近づける。
でも、 ちゃんとあなたが逃げない距離で止まる。
「先輩。」
「……なに。」
「俺、 頑張ってよかった。」
その言葉が、 思った以上にまっすぐで。
あなた、 胸が熱くなる。
彼、 小さく笑う。
「ずっと、 脈ないと思いながら…」
「……」
「でも止めれ無かったんです」
視線が合う
「ほんとガード固いというか…。」
「……。」
「避けられても、 カフェ変えられても、
でも… なんか完全には嫌われてない気がして。」
彼、 少し照れたみたいに笑った。
「だから、 しつこくしてました。」
「自覚あったんだ……」
「ありました。」
即答。
思わず、 あなたも笑ってしまう。
すると彼、 その笑った顔見て、 一瞬目を細めた。
「……その顔、 好きです。」
「っ。」
さらっと。
あなた、 また固まる。
彼、 すぐ笑う。
「ほらまた。 すぐ固まる。」
あなた、 少しだけ視線を落として、 小さく言う。
「……頑張ってくれて、 ありがとう。」
その瞬間。
彼、 ほんとに不意打ち食らったみたいな顔をした。
「……。」
言葉が止まる。
さっきまで結構余裕そうに笑ってたのに、 今はただ、 じっとあなたを見てる。
あなた、 少し不安になる。
「……え、 なにその顔。」
すると彼、 ふっと力抜けたみたいに笑った。
でも。
その笑い方、 ちょっと照れてる。
「いや…… なんか。」
彼、 片手で口元触る。
「“好き”より今の方が効きました。」
「えっ。」
「だって、 頑張ってたの、 ちゃんと見てくれてたってことでしょ。」
「……。」
図星。
あなた、 また恥ずかしくなる。
彼、 少し目を細める。
「俺、 結構空回ってる気してたんですよ。」
「そんなことない。」
「ほんとに?」
「……うん。」
あなた、 小さく笑う。
「ちゃんと、 嬉しかった。」
朝カフェで、 話しかけられたことも。
映画の話したことも。
距離近くて困ったことも。
避けたくせに、 会えなくなって寂しかったことも。
全部。
彼、 その言葉を聞いて、 ゆっくり息を吐いた。
安心したみたいに。
それから、 少しだけ照れた顔で笑う。
「……よかった。」
またそれ言う。
でも今度は、 あなたも少し笑ってしまう。
彼、 そんなあなたを見ながら、 そっと摘んでた袖を指先で揺らした。
「じゃあ、 これからは逃げないでくださいね。」
「……努力します。」
「“努力”なんだ。」
「だってまだ、 ドキドキしてるし……」
「俺もです。」
即答。
あなた、 思わず彼を見る。
彼、 ちょっと困ったみたいに笑った。
「先輩相手だと、 普通に緊張します。」
その言葉に、 あなたは少し目を丸くする。
「……〇〇くんでも緊張するんだ。」
「しますよ。」
彼、 苦笑いする。
「むしろ最近ずっと、 心臓忙しいです。」
「……。」
「先輩、 急に可愛いこと言うし。」
「っ。」
あなた、 また顔が熱くなる。
彼、 そんな反応見て笑う。
でも、 前みたいにからかうだけじゃない。
嬉しそうで、 大事そうに見てくる。
その視線に、 またドキドキする。
休憩室の時計が、 カチ、って鳴る。
そろそろ戻らなきゃいけない時間。
でも。
どっちも、 なかなか立ち上がらない。
彼、 袖を摘んでた指を、 名残惜しそうに離した。
その小さな動きに、 胸がきゅっとする。
「……戻りますか。」
「……うん。」
でもあなた、 立ち上がりながら小さく言う。
「なんか変な感じ。」
「何がです?」
「今まで普通に喋ってたのに、 急に全部意識しちゃう……」
彼、 少し笑う。
「俺はずっと意識してましたけどね。」
「……。」
「先輩だけ今さらなんですよ。出遅れましたね」
「うるさい……」
彼、 肩揺らして笑う。
それから、 休憩室のドア開けながら、 ふと振り返った。
「先輩。」
「ん?」
「今日、 朝カフェ行きます?」
「え。」
急な質問。
あなた、 瞬きする。
彼、 少し照れたみたいに笑った。
「ちゃんと、 隣座る許可取ってから行きます。」
「……。」
「前みたいに逃げられたくないので。」
その言い方が、 少し可愛くて。
あなた、 思わず笑ってしまう。
「……来てもいいよ。」
彼、 一瞬止まる。
それから、 嬉しそうに目を細めた。
「やば。 今日ずっと幸せ。」
あなた、 照れ隠しみたいに笑う。
「大袈裟だなあ。」
「大袈裟じゃないです。」
彼、 休憩室のドアに手を掛けたまま、 少しだけこちらを見る。
「ん?」
「今日、 送りますから。」
「……え。」
あまりにも自然に言われて、 一瞬理解が遅れる。
彼、 さらっと続ける。
「仕事終わり。」
「いや、 近いし……」
「知ってます。」
「……。」
「でも、 送りたい。」
静かな声。
前みたいな、 押しの強さじゃない。
ちゃんと、 あなたの反応を見ながら言ってる。
だから余計、 断りづらい。
あなた、 視線逸らしながら小さく言う。
「……そんな、 彼氏みたいなこと。」
その瞬間。
彼、 ぴたりと止まる。
数秒。
それから、 少しだけ笑った。
「なりたいですけどね。」
「っ。」
即死。
あなた、 思わず顔を覆う。
「むり…… 急にそういうの……」
彼、 堪えきれないみたいに笑う。
「先輩、 反応分かりやすすぎる。」
「だって……!」
「可愛い。」
「そのワード禁止!」
彼、 笑いながら「はーい」って返事する。
でも。
次にあなたを見る目は、 ちゃんと優しかった。
「……無理させるつもりないです。」
「……。」
「だから、 嫌なら断ってください。」
その言い方に、 胸がじわっと温かくなる。
あなた、 少しだけ彼を見る。
彼、 待ってる。
急かさない。
あなたは小さく息を吐いて、 照れたまま言った。
「……じゃあ、 お願いします。」
その瞬間。
彼、 びっくりするくらい嬉しそうに笑った。

