死に戻り令嬢は義兄の溺愛にされる

ヒイラギside
齢7の頃、妹マーガレットが居なくなった
お転婆だったが、天真爛漫で花のような明るい存在で
冷淡と言われる俺とは対極だった

マーガレットが行方不明になり、侯爵家は心寒くなっていった
母は嘆き、臥すことが多くなった
そんな母を見て、父は仕事にのめり込み
俺はそれを横目に侯爵家令息としての義務に打ち込んだ

数年後、母が孤児院からマーガレットに似た色彩を持つ孤児を連れてきた
孤児だから痩せぎすで、小汚かったが
月白の髪に萌黄の瞳は確かにマーガレットによく似た色彩だ

両親からは孤児の面倒を見るように言われていた
同年代の令息としか関らず、同年代の令嬢との関わり方はいまひとつ
こちらは礼儀に則って対応しているのに
パーティや茶会での同年代の令嬢たちの存在には毎回辟易した
媚びた声は耳障りで、熱い視線は鬱陶しく、擦り寄る態度は不快だ
さらに孤児だと、礼儀作法もできていない
最悪だ
そう思っていた


確かに、痩せぎすで小汚い
けれど、萌黄色の瞳は怯えが見えたが真っ直ぐで
背筋は伸びており、孤児とは思えない品格があった


義妹になったクレマチスはよく分からない行動をしていた
使用人に運動服を求めたり、厨房に入りこんだり、庭師にくっついたり
マーガレットもお転婆だったが貴族と使用人の垣根を線引きしていたが義妹は違う
貴族の養子になったのに、怯えることなく動き回っている
不思議だ


いつもの剣の素振りをしようとしたら義妹が居て驚いた
義妹が求めていた運動服ができたため走り込みをしていたらしい
なぜ走ろうとした
それよりも貴族の一員となったのだから礼儀作法や勉学に励むべきだと思うのだが
いやしかし、使用人たちからはすでに下位貴族としての礼儀作法はできていると聞いた
案外覚えがいいのか

令嬢たちのように媚びた態度を取るのか、少し試してみたくなった

「君は、クレマチスだったか
何をしている」

『はあはあ、はい数日前からお世話になっております
バイカオウレン侯爵家令息さま
体力作りのために走っておりましたが、疲れてしまったため休憩していたところでございます』
息を整えながら真っ直ぐに目線を合わせてきた
そこに媚びはなかった

「…そうか」
養子とはいえ、家族になったのに他人行儀すぎて
令嬢たちのようにバイカオウレン侯爵家令息という地位ではなく
ただのヒイラギという存在を見てくれた気がした

『…??わたくし失礼しますね』
興味ないという態度を取られたのは初めてで
クレマチスをもっと知りたくなった

クレマチスは侯爵家で過ごす時間が長くなるにつれ
容姿は美しく、礼儀は淑やかになっていった

でも、好奇心や悪戯できらきらと輝く萌黄色の瞳
時折歯が見えるほど笑い、くるくると変わる表情
所作は高位貴族らしく優美で
令嬢らしからぬ姿と令嬢らしい姿のアンバランスに
ヒイラギの心を掴んで離さない

構えば構うほど、態度は軟化し親愛な態度をとる姿に庇護欲と愛情が募った

そして、その想いは義理の兄妹とは思えないほどの独占欲と愛着へ変化するのに時間はかからなかった