目覚めたとき、窓の外はまだ柔らかな朝の光に包まれていた。ありさはすぐに起き上がり、今日のコンサートに向けて支度を始める。衣装を整え、メイクを施し、鏡に映る自分の姿を確かめるように見つめる——胸の奥には、小さな命を抱えているという思いが、いつもより一層強くあった。
「大丈夫、きっと素晴らしいステージになるよ」
愛斗がそっと背中を撫でると、ありさは頷き、笑顔を浮かべた。
一行は大阪へと到着した。街の景色が目に鮮やかに映る中、ありさ、愛斗、正子、高、勇一、森丘ヒロキの六人が並んで歩いていく。話は弾み、これからのコンサートへの期待が高まっていく——そんな矢先、突然、複数の若者たちに囲まれた。
彼らは身なりの整った一行をからかうように言葉を投げかけ、ありさにまで近づいてくる。愛斗は一歩前に出て、穏やかだが強い声で言った。
「やめてください。彼女たちに近づかないでください」
その瞬間、一人が勢いよく腕を振り上げ——愛斗の頬に衝撃が走った。
愛斗はよろめき、手で頬を押さえる。
「愛斗くん!」
正子は真っ先に駆け寄り、スマホを取り出す。「警察を呼びます! 絶対に許しません!」
その声が響いたとき、背広を着た男性が素早く駆けつけてきた。彼は毅然とした態度で彼らを制し、彼らはその迫力にたじろぎ、慌てて去っていった。
「あの……助けていただき、本当にありがとうございます」
愛斗は頭を深く下げる。男性が後ろを振り返ると、続いて有村治子が姿を現した。
「けがはないですか?」
治子が心配そうに声をかけると、愛斗はありさをそっと前に出した。
「ご紹介します。こちらがありささんです。……実は、報告があります。ありさが妊娠しました。新しい命を授かったんです」
治子の目が優しく細まる。「それは本当におめでとうございます」
愛斗は少し照れながら続けた。「それで……よろしければ、マタニティマークをいただけませんか。ありさにつけてあげたいんです」
「もちろんです」
治子はそばにいたSPからマークを受け取ると、愛斗の手にそっと置いてくれた。「これからお体を大切に、どうぞお元気で」
「ありがとうございます!」
愛斗は大切にマークを握りしめ、一行は車に乗り込んだ。
向かった先は、たこ焼きミュージアム。テーブルに座り、ありさが隣から愛斗に尋ねた。
「有村さんからマタニティマークなんでもらったの」
「たしかに気になる」
「有村治子議員がマタニティマーク考案したからだよ電車たや
店で妊婦さんに席譲らない人いるだろうそのひとをたすけるためにしたんだ 選挙にはじまるまえに俺の喫茶店きてくれてたんだ
そのときに妊婦さん席をゆずってあげない若者に
注意したら嫌味いわれたから話したんだよ」
「そうなんだ」
「うん」
マークを手に取り、みんなに見せながら話した。「このマタニティマーク、有村さんが制作に携わって、考えて作られたものなんだって」
「えっ⁉️」
正子も高も勇一も、そしてヒロキまで、一斉に驚きの声を上げた。
「そうだったの! 初めて知った」
「すごいな……」
「心がこもってるんだね」
皆が手に取って眺めていると、焼き立てのたこ焼きが運ばれてきた。熱々をふうふうと冷ましながら口に運び、「美味しい」と笑い合う。穏やかな時間が流れ、心が温まっていく。
食事を終えると、いよいよコンサート会場へ。リハーサルでは、ありさの歌声がいつもより一層深く、力強く響く。お腹の命から力をもらっているように——。
本番が始まると、観客の熱気が会場を包み込んだ。三時間、心を一つに歌い、奏で、語り合うようにステージは続き、最後には割れんばかりの拍手が鳴りやまなかった。
打ち上げでは、皆で労い合い、笑い合い、明日への元気を蓄える。そうして時間が過ぎ、ホテルへと戻ってきた。
部屋に戻ると、ありさがゆっくりとマタニティマークを手に取った。愛斗がそっと留めるのを手伝う。
「似合ってるよ」
「ありがとう……」
柔らかな灯りの中で、二人はお腹にそっと手を重ねた。これから始まる毎日が、温かく幸せなものであるように——心から願いながら、寄り添って眠りについた。
「大丈夫、きっと素晴らしいステージになるよ」
愛斗がそっと背中を撫でると、ありさは頷き、笑顔を浮かべた。
一行は大阪へと到着した。街の景色が目に鮮やかに映る中、ありさ、愛斗、正子、高、勇一、森丘ヒロキの六人が並んで歩いていく。話は弾み、これからのコンサートへの期待が高まっていく——そんな矢先、突然、複数の若者たちに囲まれた。
彼らは身なりの整った一行をからかうように言葉を投げかけ、ありさにまで近づいてくる。愛斗は一歩前に出て、穏やかだが強い声で言った。
「やめてください。彼女たちに近づかないでください」
その瞬間、一人が勢いよく腕を振り上げ——愛斗の頬に衝撃が走った。
愛斗はよろめき、手で頬を押さえる。
「愛斗くん!」
正子は真っ先に駆け寄り、スマホを取り出す。「警察を呼びます! 絶対に許しません!」
その声が響いたとき、背広を着た男性が素早く駆けつけてきた。彼は毅然とした態度で彼らを制し、彼らはその迫力にたじろぎ、慌てて去っていった。
「あの……助けていただき、本当にありがとうございます」
愛斗は頭を深く下げる。男性が後ろを振り返ると、続いて有村治子が姿を現した。
「けがはないですか?」
治子が心配そうに声をかけると、愛斗はありさをそっと前に出した。
「ご紹介します。こちらがありささんです。……実は、報告があります。ありさが妊娠しました。新しい命を授かったんです」
治子の目が優しく細まる。「それは本当におめでとうございます」
愛斗は少し照れながら続けた。「それで……よろしければ、マタニティマークをいただけませんか。ありさにつけてあげたいんです」
「もちろんです」
治子はそばにいたSPからマークを受け取ると、愛斗の手にそっと置いてくれた。「これからお体を大切に、どうぞお元気で」
「ありがとうございます!」
愛斗は大切にマークを握りしめ、一行は車に乗り込んだ。
向かった先は、たこ焼きミュージアム。テーブルに座り、ありさが隣から愛斗に尋ねた。
「有村さんからマタニティマークなんでもらったの」
「たしかに気になる」
「有村治子議員がマタニティマーク考案したからだよ電車たや
店で妊婦さんに席譲らない人いるだろうそのひとをたすけるためにしたんだ 選挙にはじまるまえに俺の喫茶店きてくれてたんだ
そのときに妊婦さん席をゆずってあげない若者に
注意したら嫌味いわれたから話したんだよ」
「そうなんだ」
「うん」
マークを手に取り、みんなに見せながら話した。「このマタニティマーク、有村さんが制作に携わって、考えて作られたものなんだって」
「えっ⁉️」
正子も高も勇一も、そしてヒロキまで、一斉に驚きの声を上げた。
「そうだったの! 初めて知った」
「すごいな……」
「心がこもってるんだね」
皆が手に取って眺めていると、焼き立てのたこ焼きが運ばれてきた。熱々をふうふうと冷ましながら口に運び、「美味しい」と笑い合う。穏やかな時間が流れ、心が温まっていく。
食事を終えると、いよいよコンサート会場へ。リハーサルでは、ありさの歌声がいつもより一層深く、力強く響く。お腹の命から力をもらっているように——。
本番が始まると、観客の熱気が会場を包み込んだ。三時間、心を一つに歌い、奏で、語り合うようにステージは続き、最後には割れんばかりの拍手が鳴りやまなかった。
打ち上げでは、皆で労い合い、笑い合い、明日への元気を蓄える。そうして時間が過ぎ、ホテルへと戻ってきた。
部屋に戻ると、ありさがゆっくりとマタニティマークを手に取った。愛斗がそっと留めるのを手伝う。
「似合ってるよ」
「ありがとう……」
柔らかな灯りの中で、二人はお腹にそっと手を重ねた。これから始まる毎日が、温かく幸せなものであるように——心から願いながら、寄り添って眠りについた。

