はじまりは、再会の後から 〜二人のイケメンからプロポーズされて困惑しています〜

もう少しで十時になろうかという頃。お待ちかねの来客が到着した。

「sasano建築設計事務所の八奈見さんがお見えです」

内線でそう報告を受けた千雪は緊張した。沼田にさらりと名前を告げられた時から思っていたが、千雪には八奈見という人物に心当たりがあるのだ。

(八奈見……まさかね)

笹野所長が緊急入院することとなり新担当に変更させてほしい、という連絡を受けたのは一昨日だった。優秀な一級建築士をつけるとは聞いていたが、知らない八奈見であってほしい。そう思いながら千雪は玄関脇の打合せスペースへ向かった。

千雪に気づいて椅子から立ち上がり、姿勢よく立っている新担当者を見て絶句する。彼は知っている八奈見だった。

千雪を見た八奈見青年の凛々しい顔が緩む。

「あぁ……。そんな気はしてたけど……やっぱり瀬戸だったか」

千雪は彼の精悍(せいかん)な表情が、くしゃっと崩れるのが好きだった。

(昔と同じ……この人は変わらないなぁ)

そんな彼から一瞬目を逸らし、短く呼吸を整える。そして自分の顔に笑顔を貼り付けた。

目の前に居る高校の同級生は穏やかな表情で、千雪の言葉を待っていた。

「はい、インテリアを担当する瀬戸千雪です。これからお世話になります。よろしくお願いします。来場者の心に刺さる、素敵なモデルハウスにしましょう」

「あ……はい。八奈見……哲平です。よろしくお願いします」

「では、失礼します」

哲平は何か言いたそうだったが、千雪は構わず机を挟んで哲平の向かいに座った。