はじまりは、再会の後から 〜二人のイケメンからプロポーズされて困惑しています〜

梨乃は怪訝な顔をして聞き返す。

「つもり……ですか?」

またもや千雪は慌てて否定した。

「いやいや!仲良しだったよ!ずっと連絡が無かったから、つい、つもりなんて言っちゃっただけ。翔也くんにも事情があったんだろうしね」

一度だけ、千雪はメールを送ったことがある。しかし返事は来なかった。それが翔也から憎い人への返事だったと思っている。

千雪は翔也との関係を掻い摘んで梨乃に語った。すると面白いもので、翔也との思い出が昨日のことのように思い浮かんでくる。

楽しいことばかりが浮かんできたのだが、最後に憎い人と言われたことも鮮明に蘇った。

(これって翔也くんに突っ込んで聞いてもいいのかな……)

自然と苦い顔になる。千雪はちくんと痛んだその感情にそっと蓋をした。

会計の時、千雪は翔也に名刺を渡した。哲平の真似をして裏にプライベートの連絡先も添えた。

「あっ、インテリアコーディネーターになったんだ。ちぃは好きなことを仕事にしたんだね。おめでとう……って言っていいのかな?」

「ありがとう。覚えていてくれたんだ。へへ……嬉しいな」

「よく建売住宅の間取りのチラシとか、インテリア雑誌とか見てたもんね。凄いよ、ちぃ」

純粋に翔也の言葉が嬉しくて、千雪は顔から耳まで真っ赤になってしまった。

昔、初めて翔也の家に入った時、洗練されたフランス風のインテリアに興奮した。こんな素敵なお家があるのかと。統一感のない雑然とした自宅のリビングに、がっかりしたことまで思い出す。

それから千雪はインテリアに興味を持った。学校の休み時間に教室でインテリアの本を読んでいたこともある。

「そんな褒められたら、ちょっと恥ずかしいよ」

「そ?」

翔也はくすっと笑う。

「あの、翔也くん。いつでもいいから連絡もらえると嬉しいな」

千雪は遠慮がちに翔也に告げた。

「もちろんだよ。ちぃとゆっくり話もしたいしね」

「え?ほんと?私と話していいの?だって……嫌じゃないの?」

「なんで?嫌なわけないでしょ。もしかして、ちぃは嫌なの?」

「まさか!話したいよ。聞きたいこともあるし。じゃあ連絡待ってる」

(普通に話ができて良かった。距離を置かれたらどうしようかと思ったよ。なんせ私は憎い人だからね)

千雪は心からほっとした。そして翔也に軽く手を振ると、梨乃と共にティエドゥールを後にした。