はじまりは、再会の後から 〜二人のイケメンからプロポーズされて困惑しています〜

お昼休憩になり、千雪と梨乃はティエドゥールへランチを食べに出かけた。

カフェ・ティエドゥールとは千雪たちの会社から歩いて行ける距離にある喫茶店だ。五十代くらいのマスターが奥さんと切り盛りしていて、とても雰囲気が良い。丸テーブルが四席、カウンターに椅子が五脚ほどの、こぢんまりとしたお店である。

良心的な値段の日替りランチを提供しているので、お昼時はすぐに満席になってしまう。なので予約しておくと安心だ。

ティエドゥールの外観と内装はフランス風にまとめられ、店内にはフレンチジャズが静かに流れていた。たまにしか行かないが、千雪にとっては落ち着ける場所だ。

そんなティエドゥールへの道すがら、梨乃が念押しの事前情報をくれた。

「新しいスタッフさんなんですけど、日本人離れした顔立ちなんですよ……。たぶんハーフなんでしょうね。とにかくイケメンで、白馬に乗った王子様みたいなんです」

「へぇ……」

「引くほどイケメンですよ。見た瞬間、気を失わないように気をつけてくださいね」

「浅田ちゃん、さすがにそれは言い過ぎでしょう」

真剣に注意事項を説明する梨乃を、千雪は笑い飛ばした。

それにしても。ハーフのイケメンで、白馬に乗った王子様とは。

千雪は、このワードにぴったりな人物を知っている。自然と彼の顔が頭に浮かんだ。

(懐かしいな。元気にしてるかな)

『彼』とは、中三の時に転校してしまった幼馴染のことである。彼を思い出して、千雪の口元が少し綻んだ。

梨乃の話が終わったタイミングでティエドゥールに到着した。

「瀬戸さんはあんまり興味なさそうですね。まぁ、いいですけど。はーい、入りますよ」

勝手に決めつけた梨乃は、スモーキーブルーの木の扉を開けた。