恋、しちゃったみたいです。

「お願いだから他言無用でお願いします。私、有栖川ホールディングスの娘なの。これはパパに頼まれた宿題。昨日小説読んでて出来なかったら、放課後残ってやってたってわけ。この内容も機密事項だから、くれぐれも内緒にしててください」

有栖川ホールディングス。
世界でも有名な会社のひとつ。
おじいちゃんが会長で、パパが代表取締役。
私はそこの娘として生まれた。お兄ちゃんは別の会社を立ち上げたため、実質私が後継者になる。

「ふーーん。有栖川ホールディングスとこのね。娘がいたなんて知らなかったわ」

そりゃ、社内でも私の存在はトップシークレットだから、ほんの一部の人間にしか知られてない。

社長令嬢、なんて肩書き、狙われやすいからね。

「そういえば、あなた名前なんていうの?」

ふと疑問に思ったから聞いてみた。

彼の顔が一瞬驚いた。
「俺の事知らねぇの?」

え、なに有名人?
けど知らないものは知らないので、「ごめんなさい。存じ上げないわ」と答える。

「水無月奏斗」

水無月??その名前に一瞬引っかかるが、気のせいだろうと思うことにした。


ブブッ

〔到着しております〕

「あ、私もう行くね。今日のことは内緒にしといてください」

それだけ伝え、パソコン室を後にした。


「あ、下の名前………」
彼の声は私の耳には届かなかった。