恋、しちゃったみたいです。

「…!」「…さん!」「有栖川さん!」

「ん…?」
名前を呼ばれた気がして起き上がる。

「あなた、私の授業で居眠りとは、随分余裕なのね?」

「いえっ…。そんなわけでは…」
たらーっと背中に冷や汗が流れる。
これはまずい。
彼女は数学の山科先生。この学園で最も怖い先生、と言われている人だ。
寄りにもよってこの先生の授業でやらかすとは。本当についてない。

「あなた、この問題解いてくれる?私の授業なんて必要ないのよね?」

「はい…」
恐る恐る黒板の前に立つ。

…。なんだこの問題。難しすぎるでしょ。
大体これって高1レベルじゃなくない?そこまで進んでないでしょ、授業。

案の定、後ろでは「難し」「私問題分の意味わかんないよ」「解けるわけないじゃん」と声が聞こえる。

「解けないの?それなのに、私の授業で居眠り?」
と、10分近くお説教をくらった。

授業終了まで事あるごとに使命され、解けなければ小言を言われ続けた。


キーンコーンカーンコーン

やっと授業が終わり、苦痛から解放されたら、陽菜が「さんざんだったね」と慰めてくれた。



「柚希、ばいばーい。私は部活してくるね」

放課後になり、陽菜は所属しているバスケ部に向かった。

さ、私帰ろう。

そう思い、鞄をもって昇降口に向かった。

「お、有栖川、ちょっと頼めるか?」
後ろから声を掛けられ、びくっとしながら振り返る。

「山田先生、なんでしょう?」
担任の山田先生が両手に多くの荷物を抱えて立っていた。
嫌な予感がする。

「これ、社会科準備室までよろしくな」
そういってどさっと教材を置いて消えていった。

うそでしょ?
今日は山科先生に目付けられるわ、山田先生にパシりにされるわ。
ついてなさすぎない?
そういえば今日の占い、12位だったか?なんとなく横目で見ていた朝のテレビ番組の星座占いを思い出す。
本当最悪…。
そんなことを思いながら、両手いっぱいの教材を抱えて、社会科準備室に向かった。