恋、しちゃったみたいです。


二人で歩きながら、隣の横顔を見る。

微妙な茶髪、キリっとした眉に、きれいな鼻筋。
目は二重で唇は薄いピンク色。
小顔で、身長も高く、手足もすらっと長い。
モデルをしていてもおかしくないルックス。
確かにこれほどかっこいいと女の子は放っておかないか、なんてひとりで納得する。


そういえば、結局あの時会った人誰だったんだろう?
いまいち顔覚えてなかったから結局わかってないんだよね。
うーーん。

「柚?どうした?」
考え事をしながら奏斗の顔を見ていたことに気づいたのか、聞いてきた。

「あぁ、ごめん。いや前ね、社会科準備室で会った男の人がいて、結局誰だったんだろうな、って気になって」
「それ俺」
「はい?!」
「やたらいろいろ運んできたときだろ?そのときあったの俺」
「……先生かと思ってた」
「気づいてなかったのかよ」
はぁ。とため息までつかれた。

「普通さ、こんなイケメンの顔、忘れるわけないとおもうんだけど?」

そういってクイッと顎を持ち上げられる。
イケメンって普通自分でいう人なんかいないと思うんだけど。どんだけナルシストなの?

「二度と忘れないようにしてやる」
そういってニヤッと笑ったやつは私に顔を近づけてきた。

チュッ

音ともに再び視界に写る奏斗の顔。

唇にはまだ温かくて柔らかいものの感触が残っている。

「……………」

「これ、今日のお礼な」

にっこりと笑いながら、手を頭に置きポンポンされる。

「ほら、置いていくぞ」

そういって奏斗は私の手を引き、再び歩きはじめる。

気づけばいつもの場所にいて、
「お嬢様?」
という来栖の声でハッとなる。

「また明日な」
そういってヒラヒラ手を振り、奏斗は帰っていった。

……私、何された?

ほんの十分前の出来事が脳裏によみがえる。

私は無意識に唇に手を持っていき、まだ感触が残っているのを自覚する。

「はぁぁぁぁ?!」

キスされたと自覚し、車内に私の大声が響き渡った。

「お、お嬢様?!」

びっくりしたように来栖が問う。

「あ、ごめん。何でもないの」

うそうそうそうそ

え、キス?なんで?ファーストキスだったのに!


ファーストキスは好きな人とという私の儚い夢は、いとも簡単に奏斗に奪われたのであった。