続・恋の終電列車

 「じゃあ主任はその彼氏の為に仕事を辞めて家庭に入るって言うんですか⁉︎地位も名誉も管理職という立場も捨ててその彼氏の為に一生を棒に振るおつもりですか⁉︎」

 バンッとまたテーブルを叩く田端さんはさっきよりもより大きな音でテーブルを叩いた。狭い休憩室なのだ。絶対に外にまで音が漏れただろうと少し気が重くなった…。

 「私だって、辞めたくないし、本当に辞めるつもりなんてないんだよ。だけど…結婚てその人の実家も含めて受け止めるというか…本人達だけが良ければ良いんじゃないんだと今回の事で痛感したというか…。」

 またチビチビとコーヒーを飲みながら言葉を発する私は少し気弱になっていた。先程まで熱々だったコーヒーはもうすっかり冷めている。

 「主任が辞めたくないなら、絶対に仕事は辞めるべきじゃないですよ⁉︎第一間に入ってる彼氏さんは何て言ってるんですか⁉︎まさか本当に家庭に入って欲しいなんて言ってきてないですよね⁉︎」

 田端さんは自分用に淹れておいたコーヒーをグビグビ飲んでさっきよりも更に憤っている。

 「淀野さんは仕事は辞めないで良いし、結婚式もする必要はないって言ってるよ。僕が両親を説得するから、私は何も気にしないでいいって…。」

 あれから一度もちゃんと淀野さんと話はできていないけれど、優しい淀野さんなら私を庇って自分の両親を説得しにいくのではないかと安易に想像できた。でもそれがご両親の意向とは違うものだと言う事が、何となく申し訳なかった…。

 「それなら、自分の実家の事なんて彼氏さんに何とかしてもらえばいいですよ。主任がそこまで考える事じゃありませんて⁉︎」

 落ち着いた表情で安心した様に一口コーヒーを飲む田端さんは「あっ、もう休憩時間過ぎてる⁉︎」と言って慌てて残りのコーヒーを飲み干してさっていった。

 確かに淀野さんの実家の事なんて、淀野さん本人に何とかして貰えばいいのかもしれない…。でも、本当に私は何もしないで良いのだろうか…⁇

 冷めたコーヒーの残りを全部飲み干した私は、結局答えの出ないまま休憩室を後にした…。