続・恋の終電列車

 「ちょっと待ってくださいお母さん。穂波さんは今の仕事にやりがいを持って毎日働いているんです。そんな時代錯誤な事飲み込める訳ない。僕は穂波さんには仕事は今まで通り続けて欲しいと考えています。」

 間に入って必死に弁明してくれる淀野さんは余裕のない表情でお母さんに言い返した。家庭に入って欲しいと言われて、はい。分かりました。と二つ返事ができる訳がない。

 戸惑いを隠せない私に次に口を開いたのは淀野さんのお父さんだった。お父さんは縁側に座っていた重い腰を上げ、こちらに近づいて来る。

 「もし2人が本当に結婚するのなら、式もあげて欲しいと考えています。警察官にはには上司や同僚、組織の一員として付き合っていかなきゃいけないしがらみが沢山あります。松川さんには、警察官の妻になるという事をきちんと自覚してもらわなければ困ります。」

 お父さんの厳しい言葉に胸を締め付けらるような衝撃が走った。私は警察官の妻になるという事を少し甘く考えていたのかもしれない…。

 結局、私はお母さんから言われた問い掛けにも、お父さんからの厳しいお言葉にもちゃんと返答ができないまま、淀野家を後にすることになった…。

 「穂波さんすみません。父と母が無理難題や厳しい言葉を…。」

 淀野さんはそこまで言うと言葉尻を濁している…。無理もない。淀野さんのお父さんとお母さんが言っている事はきっと警察官の妻になるなら当然の事なのだ…。

 「私の方こそごめんなさい…。家庭に入るように言われて、何と言っていいのか分からなくて、直ぐには返答が出来ませんでした…。」

 警察官の妻になると言う事をそんなに重く考えていなかった私は、正直面食らってしまった…。

 「穂波さんは何も悪くありません。うちの両親は今時珍しいくらい古い考え方をする頭の固い両親なんです。だから今時あんな事を…。両親の言った事なら気にする事はありません。両親にはちゃんと僕から言っておきます。」

 優しい淀野さんは私の肩を摩って私を優しく宥めてくれた。

 淀野さんは私に何も気にしなくてもいい。平気だと言っているが、私は本当に気にしなくても大丈夫なのだろうか⁇

 直ぐに答えの出ないまま、私はモヤモヤとした申し訳ない気持ちを抱えたまま1日1日を過ごした。

 でも、警察官の妻になる事を自覚してもらわないと困るという淀野さんのお父さんの言葉を、私はこれから痛感することになる…。