続・恋の終電列車

 日曜日…。穏やかな心じゃないまま迎えたご挨拶日当日は、前日も緊張してあまり眠れず、目の下にくっきりとクマができていないか気になるくらいだった…。

 「やっぱり緊張するな…。」

 胸元を押さえて大きなため息混じりに言葉を発する私に「そんなに緊張しないでください。心配しなくても大丈夫です。」と淀野さんが背中を摩って宥めてくれた。

 スーハー。と大きく深呼吸をした私は、淀野さんと一緒に淀野家のチャイムのボタンを押した。

 すると、「はーい。」と明るくて元気そうな淀野さんのお母さんらしき女性が玄関口で出迎えてくれた。

 「あの…松川穂波です。」

 手土産に持参した長寿庵のどら焼きを手渡した私は、緊張した面持ちでお母さんに挨拶した。

 下を向いて緊張している私に、淀野さんのお母さんらしき人は「そんなに緊張しないで良いのよ。どうぞあがってください。」と言って私を家の中に案内してくれた。

 家の中に入ると居間に通され、リビングらしい場所には古風なソファーにテレビと言ったら昔ながらの応接間セットが配置されていた。

 (……思っていたよりずっと古風なお家……)

 しがない郊外の一軒家暮らしの私には古風な厳格な雰囲気の淀野家のお宅が緊張を増長させる。

 リビングのソファーに座った私は、どこからともなく圧のような重い視線を感じて隣の私の縁側に視線を移した。

 視線の先には淀野さんのお父さんらしき人がこちらに鋭い視線を向けて何か言いたげにこちらを見ている。

 私は緊張し切っていた心がドキリと跳ねて、固まりながらもやっとお辞儀した。

 「父さん。この人が松川穂波さんで、僕の婚約者です。」

 淀野さんが畏まって私を紹介したものだから、私は緊張しきった体をピンと伸ばし、「松川です。よろしくお願いします。」と深々とお辞儀をして自己紹介した。

 淀野さんのお父さんは怖そうな人ではないけれどあまり言葉を発さない厳格で真面目そうな人で、私は思わず身体が硬直してしまう。

 眉毛をピクリと動かした淀野さんのお父さんは私を一瞥すると「そうですか。亘の父です。失礼ですが松川さんはお仕事は⁇」と、小さいけれどハッキリした言葉で私に訊ねた。

 「私は、INADAのSHOWROOM部門で主任として働いています。」

 緊張しながらやっと言葉を発する私には年上なのに何の余裕もなかった。なぜ仕事の事を聞くのかは分からなかったが、私には何か意図があって質問するのだろうと安易に想像ができた。

 台所にいたら淀野さんのお母さんがお茶を持って来てリビングに入ってきて応接間の敷物の上に座った。そして静かに口を開いた。

 「松川さん…。亘は知っての通り警察官です。妻になる人には、亘を献身的に支えてほしいと考えています。だから、松川さんには仕事を辞めて亘に尽くして欲しいと考えています。松川さんにそれが出来ますか⁇」

 お母さんの言葉にショックを受けた私は言葉が出なくなった。まさか自分が仕事を辞めて淀野さんを支えるように言われるとは思わなかったからだ。