続・恋の終電列車

 「それは、これから行く食事の席で話します。」

 いつになく積極的な淀野さんに驚かされながら、私は食事の会場へと手を引いて導かれた。

 「ここです。」と連れ出されたお店は、予約しなきゃ入ることのできないような有名フレンチのお店だった。

 普段は行かない高級なフレンチのお店に少し尻込みして驚く私は、淀野さんが予約しておいてくれた素敵な景色が一望できる窓際の席へと案内された。

 席に座ってお互いに向かい合った私に、淀野さんが緊張した面持ちで綺麗な透明なジュエリーケースを差し出した。

 えっ⁉︎これって…もしかして…と少し色の付いた感情で驚く私に、淀野さんが静かに口を開いた。

 「ほ、穂波さん⁉︎僕と結婚してください。」

 少し予想していたけれどちゃんとした言葉でハッキリとした言葉でプロポーズをされた私は感激して涙が出そうになる…。

 下を俯いていた私はゆっくりと顔を上げて淀野さんの顔を見た。勿論返事はもう決まっている…。

 「はい。亘さん。喜んで…。」
   
 直ぐに二つ返事でプロポーズの話をOKした私は、嬉しくて口元を押さえて感激の涙を流した…。

 「ほ、本当ですか⁉︎良かった。」

 淀野さんはクシャクシャの笑顔で顔を綻ばせて笑っている。そんな所も可愛いなと思った。

 淀野さんが私にくれたのは、小さいけれど可愛いダイヤの付いたシルバーの素敵なリングだった。

 今まで何人かの男の人と付き合って来たけれど、こうやって面と向かってプロポーズしてくれた男性は淀野さんが初めてだった。

 自分にこんなに幸せな日々が訪れるなんて、嬉しくて何と言って良いのか分からなくなる…。

 淀野さんと私はそれから美味しいフレンチ料理を堪能しながら、一体いつからこの日の計画を企てていたのかと気になって、それとなく問い詰めてみた。

 「実は…もう1ヶ月前からで…。」

 正直に照れながらポツリと口を開いた淀野さんは嘘がつけない真底真面目な人なのだと悟った。1ヶ月前は、何だか淀野さんがよそよそしくなった時と日付が重なる。

 そんな嘘のつけない淀野さんに、そんなに嘘がつけないなら結婚してからも安心だと思わず下を向いてクスッと笑った。

 「何となく様子が違ったのもそのせいだったんですね⁇」

 照れながら何気なく訊ねた私は、この人となら、幸せな結婚生活が送れると密かに確証した。

 「僕ってそんなに分かりやすいですかね⁇」

 綺麗にセットしてある髪をポリポリと掻く淀野さんは少し恥ずかしそうだ。

 「はい。凄く分かりやすいです。」

 満面の笑みで答える私に淀野さんは少しバツが悪そうだ。「でも、そんな所も淀野さんらしいです。」と言って、私はやっぱり満面の笑みを向けた。

 「参ったな。」と笑う淀野さんはやっぱり照れているけど、本当は「そんな所も好きです。」と付け加えたいくらいだった。

 店を出て帰り道を歩く私達は、もう結婚を約束した仲なのに、まだどことなくぎこちなく手を繋いで帰った。

 人より少し高い私の背丈と、私よりも10センチ近く高い淀野さんの身長が並んで自然に歩く姿が嬉しくなった。

 (……淀野さんとなら、ヒールを履いて歩ける……)

 私は堪らなく幸せな気持ちになった♡





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