架空食べ物エッセイ

縁側の軒下から提げた簾の隙間。
見えるのは、青い空と真っ白な入道雲。
閉めきっていても聞こえる蝉の大合唱。

絵に描いたような日本の夏だ。

そんなことをぼんやりと考えながら、私はちゃぶ台に昼ご飯を並べた。

夏の昼食と言えば、そうめん。

細い麺が横たわる透明のガラスの器は、切子細工が施されている。
涼しげで気に入っている。
夏の光を浴びてきらきらと輝いて、とても綺麗。

真っ白くて細い麺の中に淡いピンク色を発見すると、私の中の子供心が喜ぶ。

そうめんだけでは野菜やたんぱく質が摂れないので、天ぷらを添えて。

「いただきます」

まずは大葉の天ぷら。
めんつゆに少しつけて噛むとしゃくっと細かく砕け、大葉の爽やかな香りが鼻を抜けていく。
大葉の天ぷらはとても軽い。
それでいて、揚げ物特有の食べ応えもあるのがいい。

合間にそうめんをつるりと啜る。
そうめんはこの細さが良いなと思う。
つるつるとなめらかで、いくらでも食べられる。

次は海老天。
先端をめんつゆに浸した後、かぶりつく。
まず衣のさくっとした小気味いい歯ごたえ。
それから、ぷりっと弾力がある海老。
海老の旨味・めんつゆの塩気・衣の油っ気が一体となって満足感をもたらす。

ネギとそうめんで口の中がさっぱりとしたので、ナスの天ぷらを。
表面はさくっと、中はとろりとしてめんつゆを吸い込んでたまらない。

喉が乾いたな。
ガラスコップに麦茶を注ぐ。
冷たい麦茶をぐいっと煽ると、喉が冷たくなっていく。
それから、大麦の香ばしい匂い。

オレンジやレモンの断面が描かれた麦茶ポットは、いわゆる昭和レトロでかわいい。


ふぅ、と深く息を吐いてから、また食べ始める。
天ぷらもそうめんも全部平らげて箸を置く。

「ご馳走様でした」

少しだけ窓を開けると、簾の合間から心地よい風が入って来た。

縁側の軒下に提げた風鈴が揺れて、りぃん、と涼やかな音を鳴らす。

緑色の螺旋状に巻いた蚊取り線香に、マッチを擦って火をつける。
ブタの形をした白い陶器ーー蚊やり豚だーーの中に入れると、煙が外に流れて行く。

蚊取り線香の匂いって、こどもの頃の夏休みを思い出して、懐かしい気持ちになる。

座布団を二つに折って簡易枕にして、畳にごろりと寝転がった。
扇風機に手を伸ばして、首振りモードスイッチを押す。

おやつの時間まで、少しだけうたた寝をしようか。

よく冷やしたスイカを夢見て。