生贄聖女ですが、モラハラクズ魔王と国を立て直します!



何もすることがないので、ソフィアはそっと廊下を覗いてみた。

すると、ガヤガヤと男女の騒がしい声が聞こえてきた。


カツカツカツ


と、男の靴が鳴る。


「アラン様ぁ、明日結婚式なんでしょう〜寂しい〜」
「今日はたくさん可愛がってねぇ~」
胸が見えそうなドレスを着た猫族の女たちが口々に言う。
背の高い黒髪の男に絡みつきながらソフィアの方に向かって歩いてきた。

「ふん、人間との無駄な戦いを終わらすための生け贄だ」

男ははっきりとした口調で言った。耳に響くような低音だ。


男の顔は見えないが、あれが魔王アラン・デイトリッヒ……と、
ソフィアは理解した。
そっと、扉を閉めようとしたその時

 「!!」


ガっと扉に圧力がかかり、次の瞬間扉が大きく開いた。


「きゃ……」

ソフィアが逃げようとするも、アランが両腕を掴んでしまった。
囚われた小動物のように震えながら、ソフィアはアランを見つめた。


長い黒髪に血のように赤い瞳、頭からは魔族の証しである禍々しい羊のような角が黒黒と隆起している。
しかし、なんという美しさか……これも魔の力なのか。


「ふーん、これが散々俺たちの邪魔をしてくれた聖女か……」


ジロジロと吸い込まれそうな瞳で見られる。
ソフィアは怯えながらも、ギロッとアランを睨む。

「は、離してください!」

プラチナブロンドの髪と透けてしまいそうに白い肌、睨むその瞳は青くサファイアのように美しかった。魔族には美しいものが力を持つとされているが、まさにソフィアは美しく魔力を蓄えていると感じられた。


「……美味そうな女だな。ふふ。そう怯えなくとも可愛がってやるよ。明日を楽しみにしておくがいい」

アランはソフィアをパッと離し、再び女の肩を抱くと悠々と自身の部屋に帰って行った。
女たちもソフィアの前では静かにしていたが、歩き始めるとまたくだらない話をしながらキャッキャと楽しそうにしていた。




ソフィアは呆然としながら、明日から夫となる男の後ろ姿を見つめた……。