アルトラス王国の城壁の周りでは城下町が栄え、海も近く、漁業が盛んである。
しかし、長年に渡る魔族との戦いで、常に危険との背中合わせの生活が続いていた。
人々は魔族に怯え暮らしていた。
城壁の外に出ることはまず無い。その城壁の屈強さが、人間たちの恐怖を表していた。
そして、今、城の中では人間世界の運命を決める会議が開かれていた。
絢爛豪華な大広間の中には巨大な机、その対面に二人の男が座っていた。
「……では、戦争の終結条件として、国王、あなたの娘であるソフィア嬢をいただこう」
「えっ……そ、それは」
アルトラス国王は真っ青な顔で相手を見上げる。
ぽっちゃりとした小男だ。しかし、赤いマントをかけ、立派な刺繍が施された服を着ている。
その後ろには傭兵が二人並んでいるが、動かない。
しかし、アルトラス国王は真っ赤な瞳に怯えてすぐに目をそらしてしまう。
震えて縮こまる小さな動物のようだ。
「ソフィア嬢は聖女であろう?
その力は絶大。この豊かな国もいつも魔族から守っていると聞く。
魔族と停戦が終結するならば聖女などいらないだろう」
「しかし、魔王様!!ソフィアはまだ16歳で……」
魔王様、と呼ばれた男は長い黒髪を耳に書き上げ、にっこりとほほ笑んだ。
身長は高く、耳に大きな角がある。
この世の美を集めたような見目麗しい姿だ。
美しいほほ笑みに女性であれば時めいてしまうだろう。
「大丈夫、取って食おうとしているわけではない。
我が花嫁としていただこうと思っておるのだ。
それで、この国の平和が継続できるのだから問題ないであろう」
「……は、はなよめ……」
アルトラス国王はもう何も言うことができなかった。
こうして、長年に渡る魔族との戦いに終止符が打たれ、
聖女ソフィアは家族のもとを離れ、
魔王アラン・デイトリッヒの元へ嫁ぐことになったのだ……。

