━ カラン カラン

「斎くーん!!!」


「うわっっ」





あれから数時間。

あの女が去ってから数時間後の、25日の午前6時。


勢いよく店に飛び込んで

俺に抱き着いて来たのは店長だった。





「店長…早かったっすね…っ」


俺は抱き着く店長を引きはがしながら問い掛ける。


約束では、今日の午前9時まで俺一人のはずだ。


「いやー…

やっぱ、イヴに一人にさせたことが

なんとなく罪悪感でねぇ。」


引きはがされた店長は

もう抱き着こうとはせず

苦笑いでそう答え


「俺も今から入るから!

もちろん9時までは

約束通り斎くんの時給は変えないよ。」


付け加えたようにそう言うと

レジ裏に消えて行った。




…相変わらず、いい人だ。




他人を信用することは出来ないが

あの人だけは

『いい人』だと思える。



俺より7つも年上のくせに、


『大人特有の汚れ』がないというか…

とにかく純粋な人間に見える。




きっとあの人が店長だから

俺はこの店でバイトを続けられるんだろうな…


そんなことを思いながら

俺は約束の9時まできちんと働いた。