…は?

あの女、なんで俺の名前…!!??


一瞬背筋がゾクッと凍るような感覚に襲われたが

ハッと今の自分を思いだす。



あ、俺、バイト中なんだっけ。



そう思い視線を胸元に向ければ

フルネームが書かれた名札がきちんとついていた。


…にしてもあの女

馬鹿そうなくせに

よく『いつき』って読めたな…


そんなことを思いながら

俺はしばらく女が去って行った扉を見つめていた。












女が抱きしめられてるの見た時

正直…




うらやましかった。




第三者の女が本気で心配してたことは

一目瞭然だったから。


俺も…




あんな風に誰かに心配されたいと





一瞬願ってしまった。





「諦めが悪いな、俺も」





自分で決めたじゃねぇか。


もう誰も信じないって。

もう誰も………愛さないって。





一瞬でも他人を想う気持ちを羨ましく思ってしまった自分を鼻で笑って

俺は再び働きはじめた。