推しが彼氏!?

☆第13話☆ 「約束の続き」

ツアーを終えたNXTは、久しぶりに東京の事務所へ戻ってきた。

長かった全国ツアー。

疲れはあるはずなのに、メンバーの表情は達成感でいっぱいだった。

「ただいまー!」

ユウが元気よく事務所のドアを開ける。

「おかえり!」

スタッフたちの拍手が響き、事務所は温かい空気に包まれた。

「みんな、本当にお疲れさま!」

マネージャーが笑顔で迎える。

「今日は午後から少しだけ休んでいいよ。」

「やったー!」

ユウとレンが顔を見合わせて喜ぶ。

その横で、リオは辺りを見回していた。

「……。」

探している人は、一人だけ。

「リオ?」

ハルが気づいて小さく笑う。

「探してる?」

「……うん。」

隠すつもりもなく、素直にうなずいた。

「ミオちゃん?」

「うん。」

するとスタッフが近づいてくる。

「ミオちゃんは今日は学校だよ。」

「今日は来られないって連絡があったよ。」

その言葉に、少しだけ肩を落とすリオ。

「そっか……。」

その様子を見ていたユウは、ニヤッと笑った。

「会いたかったんだ。」

「……。」

否定しない。

もう、ごまかす必要はなかった。

「約束したから。」

その一言に、メンバー全員が優しく笑う。

「リオらしいね。」

ソラが静かに言った。

「約束をちゃんと大事にするところ。」

その日の午後。

学校を終えたミオは、事務所から届いたメッセージを見ていた。

«『ツアー、お疲れさまでした!また時間がある時に遊びに来てね。』»

スタッフさんからのメッセージだった。

ミオは思わず笑顔になる。

「明日なら行けるかな。」

そうつぶやいた時、スマホがもう一度震えた。

今度は、知らない番号からだった。

『こんばんは。リオです。』

短いメッセージ。

でも、それだけで心臓が大きく跳ねる。

『約束、覚えてる?』

ミオは少しだけ笑って、すぐに返信を打つ。

『もちろんです😊』

数秒後、また返信が届く。

『明日、事務所で待ってる。』

たったそれだけのやり取りなのに、胸がいっぱいになる。

ミオはスマホをそっと胸に抱きしめた。

「明日、会えるんだ……。」

窓の外では、夕日が街をオレンジ色に染めていた。

その頃、事務所では——。

「返信きた?」

ユウがリオの肩越しにスマホをのぞき込む。

「うん。」

「どれどれ……『もちろんです😊』」

「見るなって。」

珍しく少し照れたリオに、みんなが笑う。

ハルは優しく微笑んだ。

「よかったね。」

リオも小さく笑い返す。

「うん。」

明日。

約束の続きを始めよう。

そんな想いを胸に、静かな夜はゆっくり更けていった。

翌日の午後。

学校を終えたミオは、少し急ぎ足で事務所へ向かった。

(久しぶりに会える……。)

そう思うだけで、自然と笑顔になってしまう。

事務所のドアを開けると——

「こんにちは!」

「ミオちゃん!」

スタッフさんたちが温かく迎えてくれた。

「おかえり!」

その一言が、なんだか嬉しかった。

「リオなら屋上にいるよ。」

「えっ?」

「休憩中。」

ミオは軽くお礼を言って、屋上へ向かった。

---

扉を開けると、少しひんやりした風が頬をなでる。

夕暮れ前の空。

屋上のフェンスにもたれながら、リオが街を見下ろしていた。

「リオさん。」

その声に振り返る。

「……ミオ。」

優しい笑顔。

「来てくれた。」

「約束しましたから。」

その言葉に、リオも少し照れたように笑う。

「ありがとう。」

二人は並んでフェンスにもたれた。

少しだけ沈黙。

でも、不思議と気まずくはない。

風の音だけが静かに流れていく。

「ツアー、お疲れさまでした。」

「ありがとう。」

「全部、ニュースで見てました。」

「本当に?」

「はい!」

ミオは嬉しそうにうなずく。

「ステージのリオさん、すごくかっこよかったです!」

その言葉に、リオは少し照れながら視線をそらした。

「そういうこと、まっすぐ言われると照れる。」

「え?」

「……でも、嬉しい。」

その笑顔に、ミオの胸はドキッと高鳴る。

---

しばらくして、リオが小さく口を開いた。

「ツアー中さ。」

「はい?」

「毎日、ミオのこと思い出してた。」

「え……?」

思わず息をのむ。

リオは少し恥ずかしそうに笑った。

「夕焼けを見るたびに。」

「屋上で話したこととか。」

「夏祭りとか。」

「全部思い出してた。」

ミオは言葉が出なかった。

そんなふうに思ってくれていたなんて、想像もしていなかった。

「私も……。」

勇気を出して言う。

「毎日、リオさんのこと応援してました。」

「学校でも、家でも。」

「テレビで見るたびに嬉しくなって……。」

リオは静かに微笑む。

「ありがとう。」

その二文字には、たくさんの気持ちが込められていた。

---

その時、屋上のドアが開く。

「いたいた!」

ユウが顔をのぞかせた。

「二人とも、もうすぐ打ち合わせ始まるよ!」

「今行く。」

リオは立ち上がる。

でも、すぐには歩き出さなかった。

「ミオ。」

「はい?」

「また時間ができたら——。」

少し照れながら笑う。

「ここで話そう。」

ミオも笑顔でうなずく。

「はい!」

二人だけの秘密の場所。

屋上は、いつの間にか二人の大切な思い出が詰まった場所になっていた。

夕焼けに照らされながら並んで歩く二人を見て、ユウは小さくつぶやく。

「もう時間の問題だな。」

ハルは優しく笑う。

「うん。きっと、二人なら大丈夫。」

そして物語は、告白へ向かってゆっくりと動き始める——。

打ち合わせが終わる頃には、外はすっかり夕暮れになっていた。

ミオは帰る準備をしながら、バッグを肩に掛ける。

「今日はありがとうございました!」

スタッフさんたちにあいさつをすると、みんなが笑顔で手を振ってくれた。

「またいつでもおいで!」

「はい!」

事務所を出ようとした、その時。

「ミオ。」

後ろから聞き慣れた声がした。

振り返ると、リオが少し息を切らしながら立っていた。

「リオさん?」

「駅まで、一緒に行ってもいい?」

突然の言葉に、ミオは目を丸くする。

「もちろんです!」

二人は並んで歩き始めた。

秋の夕方は少し涼しく、街路樹の葉が風に揺れている。

最初は少し緊張していた二人だったけれど、学校のことやツアー中の出来事を話しているうちに、自然と笑顔が増えていった。

「ユウさん、本番前に振り付けを間違えそうになってたんですよ。」

「えっ、本当に?」

ミオが思わず笑う。

「内緒だけどね。」

「ふふっ、秘密です。」

そんな何気ない会話が、とても楽しかった。

駅が見えてきた頃、リオが足を止める。

「ミオ。」

「はい?」

「今日は来てくれて、本当にありがとう。」

「私も会えて嬉しかったです。」

その言葉を聞いて、リオは安心したように笑った。

少しだけ沈黙が流れる。

電車がホームへ入る音が聞こえた。

リオはポケットから小さな紙袋を取り出す。

「これ。」

「え?」

「ツアー先で見つけた。」

ミオが受け取ると、中には夜空をイメージした青い星のキーホルダーが入っていた。

星の真ん中には、小さく「Dream」の文字が刻まれている。

「かわいい……!」

ミオの目が輝く。

「ありがとう、大切にします!」

「よかった。」

リオは少し照れくさそうに笑う。

「前にもらったキーホルダー、今も持ってるから。」

その一言に、ミオの胸が熱くなる。

お互いが贈ったものを、大切に持ち続けている。

それだけで十分幸せだった。

「じゃあ……。」

電車がホームに到着する。

ミオは改札へ向かいながら振り返る。

「また会いましょう!」

リオも手を振り返した。

「うん。また。」

その笑顔は、初めて会った頃よりずっと自然だった。

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翌日。

NXTの控室。

「お土産渡せた?」

ユウがニヤニヤしながら聞く。

「渡せた。」

「反応は?」

「すごく喜んでくれた。」

リオが優しく笑うと、メンバーみんなも笑顔になる。

ハルが静かに言った。

「次は、二人でどこか行けたらいいね。」

その言葉に、リオは少し考えてからうなずく。

「……そうだね。」

窓の外には、どこまでも青い秋空が広がっていた。

少しずつ近づく二人の心。

そして、新しい季節とともに、恋もまた一歩前へ進もうとしていた。