推しが彼氏!?

☆第10話☆ 「離れていても」

― ミオ目線 ―

「今日から新学期です!」

教室に先生の元気な声が響く。

夏休みが終わり、久しぶりに会う友達の笑い声で教室はいっぱいだった。

「ミオー!」

親友のユナが駆け寄ってくる。

「夏休みどうだった?」

「すっごく楽しかったよ!」

「いいなぁ!アルバイトもしてたんでしょ?」

「うん!」

笑顔で答えながらも、心の中では別のことを考えていた。

(今頃、リオさんたちはレッスンかな……。)

学校にいるだけなのに、ふと事務所のことを思い出してしまう。

「ミオ?」

「え?」

「ぼーっとしてる!」

「ご、ごめん!」

ユナは少し笑って首をかしげた。

「何かいいことあった?」

「えっ!?」

思わず顔が熱くなる。

「な、何でもないよ!」

そんな反応を見て、ユナはくすっと笑った。

「怪しいなぁ。」

---

放課後。

帰り道、私は事務所の前を通った。

毎日通っていた場所。

でも今日は、中へ入らずに通り過ぎるだけ。

「……。」

少しだけ寂しい。

その時、一台の黒い車が事務所の前に止まった。

(あれ……?)

見覚えのある車。

ドアが開き、NXTのメンバーが降りてくる。

「あっ!」

思わず足を止めた。

すると、最後に降りてきたリオが私に気づく。

目が合う。

ほんの数秒。

でも、その数秒がとても長く感じた。

リオは驚いたように目を見開き、それから優しく笑う。

「ミオ。」

小さく名前を呼んでくれた。

「リオさん!」

嬉しくて笑顔になる。

「学校、お疲れさま。」

「ありがとうございます!」

少しだけ話したかった。

でもスタッフさんが呼んでいる。

「リオー!急ぐよ!」

「……うん。」

リオは少し名残惜しそうに振り返った。

「また。」

短い一言。

でも、その一言だけで十分だった。

「はい!また!」

車が見えなくなるまで見送る。

胸の中が、ぽかぽか温かかった。

---

― リオ目線 ―

新学期が始まった。

ということは。

ミオはもう学校生活に戻っている。

レッスン中も、ふと考えてしまう。

(ちゃんと学校楽しめてるかな。)

そんな自分に苦笑する。

休憩中、事務所へ戻る車の窓から外を眺めていると──。

「あ。」

事務所の前を歩く制服姿のミオが見えた。

「止めてください!」

思わず声が出る。

車がゆっくり止まる。

ドアを開けると、ミオがこちらを見て笑っていた。

(会えた。)

それだけなのに、胸がいっぱいになる。

「学校、お疲れさま。」

その言葉しか出てこなかった。

本当は。

「会いたかった。」

そう言いたかった。

でも、まだ言えない。

「リオ。」

ハルが静かに肩を叩く。

「そろそろ行こう。」

「……うん。」

車に乗り込む。

窓の外では、ミオが手を振ってくれていた。

リオも小さく手を振り返す。

(少ししか話せなかった。)

それなのに。

今日一日で、一番嬉しい時間だった。

「リオ。」

ユウが笑いながら言う。

「今、めちゃくちゃ嬉しそう。」

「……そう?」

「うん。」

ソラも優しく笑う。

「少し会えただけで、その顔だもん。」

リオは照れくさそうに窓の外を見つめる。

(少しでも会えるだけで嬉しい。)

そんな気持ちになる人は、一人しかいなかった

― ミオ目線 ―

新学期が始まって一週間。

学校生活にも少しずつ慣れてきた。

でも、お昼休みになると、ついスマホを見てしまう。

(今日はお仕事あるのかな。)

そんなことを考えていると──

「ミオ!」

ユナが隣に座った。

「最近、すっごく頑張ってるよね!」

「そうかな?」

「うん!なんか前より楽しそう!」

私は少し笑った。

「夏休みに、すごく素敵な人たちと出会えたからかな。」

「へぇ〜!」

ユナは興味津々だけど、それ以上は聞かなかった。

その優しさが嬉しかった。

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放課後。

家に帰る途中、事務所の公式SNSに新しい投稿がアップされていた。

«「NXT 全国ライブツアー開催決定!」»

「えっ……!」

思わず立ち止まる。

ライブツアー。

それはNXTにとって、大きな夢だった。

「すごい……!」

画面を見ながら、自然と笑顔になる。

(リオさん、よかったね。)

胸の奥がじんわり温かくなった。

私は小さくスマホを握りしめる。

「絶対、成功しますように。」

心からそう願った。

---

― リオ目線 ―

「全国ツアー、決まりました!」

マネージャーの言葉に、控室が静まり返る。

数秒後──

「やったーー!!」

ユウが飛び上がる。

レンも目を輝かせている。

ハルは静かに笑い、ソラは何度も資料を見返していた。

俺も嬉しかった。

ずっと目標だった全国ツアー。

でも同時に思う。

(忙しくなる。)

学校が始まったミオとは、もっと会えなくなるかもしれない。

その考えが頭をよぎった。

「リオ?」

ハルが心配そうに声をかける。

「嬉しくない?」

「嬉しいよ。」

本当に嬉しい。

でも。

会えない時間が増えることを考えると、少しだけ胸が締めつけられた。

その日の帰り道。

車の窓から夕焼けを見つめながら、小さくつぶやく。

「頑張らないとな。」

夢も。

そして──

いつか、ミオに自分の気持ちを伝えるためにも。

その頃、ミオも同じ夕焼けを見上げていた。

離れた場所にいても。

同じ空の下で、お互いを想いながら。

二人の距離は、少しずつ未来へ近づいていた──。

― ミオ目線 ―

土曜日の朝。

学校がお休みの日。

久しぶりに事務所のお手伝いを頼まれて、私は少し早起きをした。

「おはようございます!」

扉を開けると、懐かしい空気が広がる。

「ミオちゃん!」

スタッフさんが笑顔で迎えてくれた。

「来てくれてありがとう!」

「こちらこそ、よろしくお願いします!」

少しすると、NXTのみんなもスタジオに入ってきた。

「おはよう!」

「ミオちゃん、久しぶり!」

ユウが元気よく手を振る。

レンも笑顔で声をかけてくれた。

「学校はどう?」

「毎日楽しいです!」

みんなと話していると、最後にリオが入ってきた。

「……おはよう。」

「おはようございます!」

目が合った瞬間、お互いに少し照れてしまう。

でも、その空気はどこか心地よかった。

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午前中のレッスンが終わり、私は飲み物を準備していた。

「ミオ。」

振り返ると、リオさんがいた。

「少しだけ、いい?」

「はい!」

廊下の窓際へ移動する。

秋の風が少しだけ涼しく感じた。

「学校、どう?」

「楽しいです!」

「友達とは?」

「毎日一緒にいます!」

そう答えると、リオは安心したように笑った。

「よかった。」

少し沈黙が流れる。

窓の外では木の葉が揺れていた。

リオが小さく息を吸う。

「……会い」

「え?」

「……いや。」

少し照れたように笑って首を振る。

「なんでもない。」

(今、何を言おうとしたんだろう……。)

少し気になったけれど、聞けなかった。

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― リオ目線 ―

本当は言いたかった。

「会いたかった。」

たったその一言なのに。

口にしようとした瞬間、恥ずかしくなってしまった。

(情けないな。)

アイドルとしては堂々とステージに立てるのに。

ミオの前だと、どうしてこんなに緊張するんだろう。

「リオー!」

ユウが廊下の向こうから手を振る。

「マネージャーさん呼んでる!」

「今行く。」

歩き出そうとした時だった。

「リオさん。」

ミオが呼び止める。

「?」

「全国ツアー、おめでとうございます!」

その笑顔に、一瞬言葉を失う。

「私、ニュース見ました。」

「……ありがとう。」

「絶対に成功します!」

まっすぐな言葉。

応援してくれる瞳。

その姿を見ていると、胸が熱くなった。

「ミオ。」

「はい?」

「応援してくれて、ありがとう。」

「もちろんです!」

その返事だけで十分だった。

ツアーへの不安も、緊張も。

全部少しだけ軽くなった気がする。

(頑張ろう。)

夢のために。

そして、いつかミオに胸を張って想いを伝えるために。

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帰り道。

事務所を出たミオは、夕焼けに染まる空を見上げて微笑んだ。

「リオさんなら、大丈夫。」

その頃、リオも車の窓から同じ空を見上げていた。

「次に会う時は……。」

もう少しだけ勇気を出したい。

離れている時間が増えても、お互いを想う気持ちは変わらない。

むしろ、少しずつ強くなっていく。

そのことを、二人はまだ知らなかった――。