新奈のクラスに行くと、クラスの子が陽平君に声をかけてきた。教室の中からは女の子の悲鳴が聞こえてくる。
「陽平、お化け屋敷入っていけよ」
「俺、お化けとか苦手なんだけど」
「一人で入れなんて言ってないだろ、男女ペアで入れよ」
「いやいや俺たち三人だからさ」
「結月呼んでから来るか」
なんて話をしていると、結月ちゃんが廊下の向こうから歩いてきているのが見える。こちらの姿を見つけて片手をひらひらと振ってくれた。
「おっまたせー、なにしてるの?」
「これでペアができるな、グーパー?」
お化け屋敷を見て、状況がわかった結月ちゃんと私は互いにグーとパーを出す。私がグーで結月ちゃんがパーだ。
「決まった? 俺グー、グーの人!」
陽平君がそう言ったので、結月ちゃんが耳打ちをしてきた。
「穂花、代わったげようか?」
「いやいや、こんなところで二人っきりになっちゃったら余計に緊張しちゃいそうだから、陽平君がいいな」
ただでなくとも今日の帰りに約束をしているのだ、結月ちゃんにそのことを告げたいのだけれど、タイミングがつかめなかった。
私は陽平君と一緒にお化け屋敷の中に入っていく。昼間なのに、段ボールで屋根が作られているので結構暗い。
扇風機が天井に付けられていて、生ぬるい風が吹いてくる。微かに聞こえてくるおどろおどろしい音も心臓の裏側をくすぐってくるみたいに気持ちが悪い。
「けっこう、本格的だな」
陽平君は本当に苦手みたいだ。私も得意な方ではないけれど、怖いもの見たさで進んで行く。
突然、壁から二本の手が伸びてきた。私は小さく悲鳴を上げる。すると、陽平君の手がスッと伸びて、私を包んだ。そのまま私を庇うように壁に背を向けて歩く。
「怖かったー」
少し進むと、陽平君は大きな息を吐いた。そして、慌てて私の体を離す。
「ご、ごめん」
「ううん。ビックリしたね」
「次は何が出るかな……」
初めて触れた陽平君の体は、私が思っているよりもずっとがっちりとしていて、陽平君が男の子なんだってことを再認識させる。お化け屋敷のせいもあって、少しだけドキドキした。
私と陽平君は足元を確かめるようにゆっくりと進んでいく。
日本人形が置かれていたり、井戸の前で背を向ける着物の女の人なんかがいたり、けっこう怖い。扇風機の生ぬるい風が頬を撫でて気持ちが悪い。
「けっこう本格的だね……」
「俺、トイレ行きたくなってきた」
「大変! 早く出よう!」
最後はほとんど駆け足で出口をくぐると、明るい廊下に出た。
「穂花も陽平もめっちゃいい反応だったー!」
後ろから着物姿の新奈がケラケラと笑って出てきた。
「あの着物の女の人、新奈!?」
「そうそう、もう、思わず笑っちゃうの堪えるの大変だった~」
「怖かった~お化け屋敷良い出来だな!」
「二組のメイド喫茶には負ける。陽平の格好可愛いね~」
「そうだった、俺メイド服じゃねぇか、忘れてたー。なんか格好つかねぇな」
「もう少しで結月と湊出てくるけど、二人ともクールすぎて超つまんなかった! お化け屋敷的にかなり悪い客だよ~」
新奈のがっかりとした言葉のすぐ後に、結月ちゃんと湊君が出口から現れた。
「前の穂花と陽平がすごい叫んでるから何事かと思ったけどさ、ほんと怖くなかったから」
「結月も湊も脅かし甲斐なさすぎ!」
「あれ、新奈その格好どこにいたの?」
「井戸の前のおいわさん役!」
「気が付かなかったな……」
湊君と結月ちゃんの様子に、新奈はがくんと肩を落とした。
新奈が制服に着替えてくるのを待っていると、透真君も戻ってきた。透真君はすでに制服を着ている。お化け役ではなかったのかもしれない。
「透真、おまえ何やってたの?」
「音響」
「良い演出してたよ~、めっちゃ怖かった」
「だろー」
「穂花の言うこと信じちゃダメよ、この子ハードル低いから」
「いや、おまえら高すぎだから、少しは驚けよ。組むペア間違えてるだろ、湊と穂花、結月と陽平、それが正解だ!」
「なんの正解だよ……」
「バランスが取れてるだろうが」
五人で話していると、新奈が戻ってくる。六人で結月ちゃんのクラスに行くことにした。結月ちゃんのクラスではミニゲームがあって、ストラックアウトにボーリング、バスケットボールのゴールリングなんかがあった。
「陽平ストラックアウトやりなよ」
「いいねぇ、セカンドでコントロールいいとか最高だろー俺って格好いい!」
「ちゃんと当ててから言いなよ」
男の子三人が挑戦。陽平君は宣言通りコントロールも良いし、軽く投げている感じなのに球威もすごかった。やっぱり毎日一生懸命練習している野球少年だけはある。九枚のパネルを全部抜いた陽平君は大きくガッツポーズをした。私も思わず痛くなるくらい手を叩く。
「陽平君格好いい!」
「だろだろ~次は湊?」
湊君もコントロールがいい、やっぱり弓道部でいつも的を狙っているからかな。四枚のパネルを抜いていた。
驚いたのは透真君だ。透真君は球威こそないけれど、パネルの真ん中に当てたりして、一度に二枚を抜いていた。結果は六枚。
「透真って何部だっけ?」
「俺? 俺庭球部」
「庭球? あれ、テニス部? 新奈と一緒じゃん」
「一年の四月はいなかったのにいつの間にか入部してた。透真、途中入部なのにめっちゃ強いの。先輩たちぼっこぼこ」
「俺中学時代からテニスやってたからな」
「何で一年の四月に入らなかったのよ」
結月ちゃんの問いかけに、透真君は実に透真君らしい答えを返す。
「一年とかどうせロクな練習しないだろ? そういうのに付き合うの面倒だから、二年の夏前くらいから入った」
透真君はこんな人だ。どこか斜めに構えていて、ひょうひょうとしていて、掴みどころがない。新奈が苦手だっていう理由が、わかる気がした。透真君は一言でいうと何を考えているのかわからない。
「透真はテニスが大好きだから軽いノリが許せないんだよな。うちのテニス部、和気あいあいとしてて雰囲気良いと思うんだけどなぁ」
「別にそんなんじゃねぇよ。要領がいいんだ俺は」
私たちも色んなゲームに参加したのだけれど、私と新奈は似たような運動音痴で、成績はさっぱり。でも、湊君がバスケットボールのシュートの仕方を教えてくれて、何個か入れることができた。弓道の時といい、湊君は教えるのが上手なのだと思う。
「陽平、お化け屋敷入っていけよ」
「俺、お化けとか苦手なんだけど」
「一人で入れなんて言ってないだろ、男女ペアで入れよ」
「いやいや俺たち三人だからさ」
「結月呼んでから来るか」
なんて話をしていると、結月ちゃんが廊下の向こうから歩いてきているのが見える。こちらの姿を見つけて片手をひらひらと振ってくれた。
「おっまたせー、なにしてるの?」
「これでペアができるな、グーパー?」
お化け屋敷を見て、状況がわかった結月ちゃんと私は互いにグーとパーを出す。私がグーで結月ちゃんがパーだ。
「決まった? 俺グー、グーの人!」
陽平君がそう言ったので、結月ちゃんが耳打ちをしてきた。
「穂花、代わったげようか?」
「いやいや、こんなところで二人っきりになっちゃったら余計に緊張しちゃいそうだから、陽平君がいいな」
ただでなくとも今日の帰りに約束をしているのだ、結月ちゃんにそのことを告げたいのだけれど、タイミングがつかめなかった。
私は陽平君と一緒にお化け屋敷の中に入っていく。昼間なのに、段ボールで屋根が作られているので結構暗い。
扇風機が天井に付けられていて、生ぬるい風が吹いてくる。微かに聞こえてくるおどろおどろしい音も心臓の裏側をくすぐってくるみたいに気持ちが悪い。
「けっこう、本格的だな」
陽平君は本当に苦手みたいだ。私も得意な方ではないけれど、怖いもの見たさで進んで行く。
突然、壁から二本の手が伸びてきた。私は小さく悲鳴を上げる。すると、陽平君の手がスッと伸びて、私を包んだ。そのまま私を庇うように壁に背を向けて歩く。
「怖かったー」
少し進むと、陽平君は大きな息を吐いた。そして、慌てて私の体を離す。
「ご、ごめん」
「ううん。ビックリしたね」
「次は何が出るかな……」
初めて触れた陽平君の体は、私が思っているよりもずっとがっちりとしていて、陽平君が男の子なんだってことを再認識させる。お化け屋敷のせいもあって、少しだけドキドキした。
私と陽平君は足元を確かめるようにゆっくりと進んでいく。
日本人形が置かれていたり、井戸の前で背を向ける着物の女の人なんかがいたり、けっこう怖い。扇風機の生ぬるい風が頬を撫でて気持ちが悪い。
「けっこう本格的だね……」
「俺、トイレ行きたくなってきた」
「大変! 早く出よう!」
最後はほとんど駆け足で出口をくぐると、明るい廊下に出た。
「穂花も陽平もめっちゃいい反応だったー!」
後ろから着物姿の新奈がケラケラと笑って出てきた。
「あの着物の女の人、新奈!?」
「そうそう、もう、思わず笑っちゃうの堪えるの大変だった~」
「怖かった~お化け屋敷良い出来だな!」
「二組のメイド喫茶には負ける。陽平の格好可愛いね~」
「そうだった、俺メイド服じゃねぇか、忘れてたー。なんか格好つかねぇな」
「もう少しで結月と湊出てくるけど、二人ともクールすぎて超つまんなかった! お化け屋敷的にかなり悪い客だよ~」
新奈のがっかりとした言葉のすぐ後に、結月ちゃんと湊君が出口から現れた。
「前の穂花と陽平がすごい叫んでるから何事かと思ったけどさ、ほんと怖くなかったから」
「結月も湊も脅かし甲斐なさすぎ!」
「あれ、新奈その格好どこにいたの?」
「井戸の前のおいわさん役!」
「気が付かなかったな……」
湊君と結月ちゃんの様子に、新奈はがくんと肩を落とした。
新奈が制服に着替えてくるのを待っていると、透真君も戻ってきた。透真君はすでに制服を着ている。お化け役ではなかったのかもしれない。
「透真、おまえ何やってたの?」
「音響」
「良い演出してたよ~、めっちゃ怖かった」
「だろー」
「穂花の言うこと信じちゃダメよ、この子ハードル低いから」
「いや、おまえら高すぎだから、少しは驚けよ。組むペア間違えてるだろ、湊と穂花、結月と陽平、それが正解だ!」
「なんの正解だよ……」
「バランスが取れてるだろうが」
五人で話していると、新奈が戻ってくる。六人で結月ちゃんのクラスに行くことにした。結月ちゃんのクラスではミニゲームがあって、ストラックアウトにボーリング、バスケットボールのゴールリングなんかがあった。
「陽平ストラックアウトやりなよ」
「いいねぇ、セカンドでコントロールいいとか最高だろー俺って格好いい!」
「ちゃんと当ててから言いなよ」
男の子三人が挑戦。陽平君は宣言通りコントロールも良いし、軽く投げている感じなのに球威もすごかった。やっぱり毎日一生懸命練習している野球少年だけはある。九枚のパネルを全部抜いた陽平君は大きくガッツポーズをした。私も思わず痛くなるくらい手を叩く。
「陽平君格好いい!」
「だろだろ~次は湊?」
湊君もコントロールがいい、やっぱり弓道部でいつも的を狙っているからかな。四枚のパネルを抜いていた。
驚いたのは透真君だ。透真君は球威こそないけれど、パネルの真ん中に当てたりして、一度に二枚を抜いていた。結果は六枚。
「透真って何部だっけ?」
「俺? 俺庭球部」
「庭球? あれ、テニス部? 新奈と一緒じゃん」
「一年の四月はいなかったのにいつの間にか入部してた。透真、途中入部なのにめっちゃ強いの。先輩たちぼっこぼこ」
「俺中学時代からテニスやってたからな」
「何で一年の四月に入らなかったのよ」
結月ちゃんの問いかけに、透真君は実に透真君らしい答えを返す。
「一年とかどうせロクな練習しないだろ? そういうのに付き合うの面倒だから、二年の夏前くらいから入った」
透真君はこんな人だ。どこか斜めに構えていて、ひょうひょうとしていて、掴みどころがない。新奈が苦手だっていう理由が、わかる気がした。透真君は一言でいうと何を考えているのかわからない。
「透真はテニスが大好きだから軽いノリが許せないんだよな。うちのテニス部、和気あいあいとしてて雰囲気良いと思うんだけどなぁ」
「別にそんなんじゃねぇよ。要領がいいんだ俺は」
私たちも色んなゲームに参加したのだけれど、私と新奈は似たような運動音痴で、成績はさっぱり。でも、湊君がバスケットボールのシュートの仕方を教えてくれて、何個か入れることができた。弓道の時といい、湊君は教えるのが上手なのだと思う。

