ナナイロ!

 その週の土曜日、私と新奈は結月ちゃんの付き添いで総合体育館に来ていた。今日はバレーボールの練習試合があるんだって。結月ちゃんたち女子バレーの練習試合は来週で、今週は男子バレーの練習試合。見に行きたいけど、一人では行きにくいっていうものだから、一緒に来させてもらうことにした。
 秋山先輩は初めからコートの中に入っていて、左側にいた。結月ちゃんに教えてもらうと、ウイングスパイカーっていうポジションなんだって。攻撃の要だって言っていた。
 コートの中にいる先輩たちは、みんな背が高くて、秋山先輩が普通に見えてしまう。

「ねぇ、あの一人だけ違う色のユニフォームの人は誰?」

 同じチームの中に、一人だけ違う色をしたユニフォームを着ている人がいる。不思議に思って結月ちゃんに尋ねると、丁寧に答えてくれた。

「あれはリベロ、攻撃には参加できない守りの要、あの先輩はどんなスパイクでも拾うスーパーリベロ」
「へぇ、知らなかったぁ」

 ルールが一つもわからない私と新奈に、結月ちゃんは丁寧に説明してくれる。秋山先輩は何度も鋭いボールを相手コートに打ち込んでいた。

「あの手でビンタされたら痛そう」
「なんてこと考えてんのよ」
「あはは、ごめんごめん」
「それにしも格好いいねぇ秋山先輩。他の先輩も超爽やかそう。バレー部いいねぇ」
「新奈、ちゃんと試合見てる?」
「見てるよ」

 一セット終わって休憩になる。すると、マネージャーの遠藤先輩が忙しく動いてタオルやドリンクを配り始めた。にこにこと可愛らしい笑顔で動き回り終えた先輩は、秋山先輩と楽しそうに会話をしている。結月ちゃんは二階席の端っこで、その光景から目を反らしていた。
 試合は滞ることなく進んでいき、休憩の度に仲の良い光景が嫌でも目についたのではないかと思う。
 試合が全部終わって、帰るころにはすっかり日が陰っていた。夕日の沈む川沿いを歩きながら結月ちゃんは大きく伸びをする。

「あー、格好良かった」
「だねぇ、すごい迫力だった」
「練習風景も結構激しいんだけどね、試合はすごい迫力だよね」

 結月ちゃんはうっすらと暗くなり始めた空を見上げる。一番星が空の低いところで輝きはじめた。

「今日は付き合ってくれてありがとう」
「ううん、誘ってくれてありがとう」
「バレーの試合とか、生で見たの初めてかも」
「私さ、いつも目を背けてたんだ。でも、試合をきちんと見たい気持ちもあってさ。なんか吹っ切れた」
「秋山先輩のこと?」
「そ、バレーも上手くなりたいって思った。先輩追っかけて思わず入っちゃったけど、沢山練習しないと、中学からやってた子たちには敵わないなって思うし、入ったからには頑張りたいかもって思う」

 結月ちゃんはそう言って大きく息を吐いた。その吐き出した息の中に、秋山先輩への思いを込めて一緒に吐き出しているみたい。目元に、きらりと涙が光って見えた。