「俺、クォーターなんです」
「クォーター?」
私が言うと、紺さんは言った。
「祖父母のどちらかが外国人の、孫のことですよ」
「それは、すごいですね。だから紺色なんですね」
私は、吸い込まれそうな紺色の瞳を見つめた。
まるで、夜空のような色。
「あ、あの」
「はい?」
紺さんの顔が、少し赤い。
「・・・そんなに長く見つめられると、困るんですが」
あ、そうか。
「ごめんなさい」
私は一歩、後ろに引き下がって、頭を下げた。
「いえ」
そして紺さんは、少したってから、こう言った。
「らいらさんは、どうしてここに?」
「分かりません」
私は正直にそう答えた。
「そう、ですか」
紺さんは、少しなにかを考えてから、言った。
「俺も、そうなんです。いつのまにか、ここへ」
大理石の壁を、懐かしむように触って、紺さんは言った。
「ですよね。こんなところ、知らないのに」
知っていたら、きっとものすごく、印象に残っているはず。
はあっと息を吐き出して、私は黙り込んだ。

