モノクロームの15センチ



第十四話

太陽が沈んで、月が出る。
あたりは暗くなり、部屋の中も暗くなる。
シャンデリアだけが、夜のかすかな光をチラつかせた。

「……あれ?」
無意識だったけど、時は流れて、もうあれから2時間。

「ちょ、ちょっとまって。もう夜だ」
私がそう言って立ち上がると、呑気にうたた寝をしていた紺さんは、んあ? と目を覚ます。
「…おはよう」
「今は朝じゃないです」

そうツッコむと、紺さんはヘラヘラしながら、そっか、といった。
「じゃあ、おやすみ」
「ちょっと、寝ないで。二度寝は体に悪影響です」

今度こそショック療法を試してみようと構えたとき、紺さんは飛び起きた。
「げ」
「なんですか」

「…いや、何にもないけど、まあ…らいらさん、物騒なことはやめよう」
物騒なんて、ひどいなあ、酷だ。
私が手に持っているのは、モバイルバッテリー。

「…まさかそれで、『ショック療法を試してみよう』だとか、考えてないよね」
紺さんが、こちらを恐れ多い感じで見るので、私は口角をあげて、言った。

「図星…って言ったら?」
紺さんの白い肌が、少し青白くなったように思う。
「…は、はははは。ごめんって。何、らいらさんは、家に帰りたいの?」

うーん、そう言われると、そうでもないんだよなあ。
「いや」
私がそう言うと、紺さんは首を傾げる。
「ふーん。じゃあ何がしたいの」

たしかになあ。
そう言われると、悩む。

夜勤や残業で帰ってこないお父さんはいいとして。
家の紺さんの実のお義母さん。
そして、紺さん。
そして、私。

…食事中、誰も一言も喋らないあの空間。
それはもはや、気まずいを通り越して怖い。
あのめちゃくちゃに気まずい三者面談みたいな感じの家に帰ろうと思うことは、この頃には殆どなくなっていた。