モノクロームの15センチ


「でもですね。私にも家があるんです」
私は胸を張ってそういった。
―――本当は、胸を張って、帰れるような場所じゃないんだけれど。
でも、帰らなければ、私はきっと家なき子になってしまう。

「まあ、そうだねえ」
紺さんは、頭に何かぶつけられないと分かって、安心したのか、喋るペースが遅くなっている。

―――というか、いつのまにか紺さんがため口になっていたんですが?
これこそがグラデーション。

「・・・だから、もっと必死になって・・・」

でも、またふとよぎる。
一瞬思った。『この部屋の中なら、別にいいかな』って。
コレは多分・・・何だろう。
もしかして、心のどこかで分かっていた?

―――私に、らいらに、あの家に居場所はないのだと?

いても空気のような存在の私に、いる価値はないと。
それとも、ここが・・・ここが、居心地がいいと?
「・・・」
「・・・元気出して」

ハッとして、顔を上げる。
私の左手を、包み込むようにして紺さんが手を置いていた。
すぐさま、手を離す。

「・・・っ、・・・な、な、なんですか?」
明らかに動揺している私。
自分でも分かる。
今、平熱より五分上がってるって。
感情、昂ぶってるって。

私、人との関わり合いは避けてきたから、かなりこういうのに疎い。
ましてや男の子なんか、紺さんが接しやすかっただけで、よく分からない。


・・・・・・・・・・・・アタフタしていたとき、紺さんが赤くなって吐息を漏らしたことを、私は知らない。