私の特等席


テスト前日のことだった。

世界史の暗記に必死になって徹夜をしていた。

それで私は、HRの時間に机に突っ伏して眠っていた。

地味な私は誰にも気付かれず、静かな教室で目が覚める。

はっ!帰らなきゃ!


テスト期間だから部活はない。

学校にいても別に楽しくない。

リュックを慌てて背負って、前の扉から出ようと、教室の真ん中辺りを小走りしていた。


「ねえ」


男子生徒の声、そして手首を掴まれた。

振り返れば…煌矢先輩がいる。

突然の出来事で、頭が追いつかなかった。


「小林なな」

「は、はい」


何で名前知ってるの?!


「付き合ってよ」


むせかえりそうになった。

推しが、付き合って…いや、買い物に付き合ってかもしれない。


「兄弟の誕生日プレゼントの買い物とかにですか?」

「…好きってことだよ、ばか」


ふと、休み時間の女子の会話を思い出した。


「ねえ、また嘘告の被害遭ったんだけど」

「え、最悪やん」


そうだ、私みたいな地味子が、バスケ部のアイドルに告白されるなんてありえない。


「騙されないです。ごめんなさい」

「はぁ?」

「クラスの人が言ってました。嘘告されたーって。先輩みたいな、アイドルみたいな人が、私のこと知るきっかけすら無いじゃないですか」